展開早過ぎね?
少し落ちて居ました。
遅くなって申し訳ない。
牢屋で一晩過ごして目が覚めた朝。格子の前で、やけに豪奢な赤紫に染め上げられ、金縁の刺繍やらモールやらを付けたローブを着込んだオッサンが、うつ伏せに倒れていた。
うん。状況が分からん。昨日までいた監視の兵士の姿も既になく、と言うか、この一角に居た筈の囚人の気配もなくなっている。
つまり、この地下牢の区画に居るのは俺とオッサンのみ。
あれ? これ、状況だけ見ると、密室殺人の犯人扱いされる人の役じゃね? 俺。
安全な牢屋の中だからって、一寸、気ぃ抜きすぎてたわ。人が動いていたであろう気配に気付かない位にガン寝してたっぽいな。
「申し訳ありませんでしたああああああぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
おおう、生きてたわ。いや、生命反応が有ったから、生きてるのは分かってたが、何でこんな事をしてるのかも、何に対して謝ってるのかも分からんのじゃが?
「いや、そもそも誰よ。アンタ」
「はは!! ワタクシは恐れ多くもこの国で『父王』等と言う者をやらせて頂いて居ります、ゴッドフリード・F・ミッシェル=ゲンゼルキアでございます!!!!」
あぁ、この人が話に聞く『父王』さんか。
「か、神御子様におかれましては、この度のワタクシ共の手違いにより、この様な事に成ってしまった事、大変、遺憾に思って居り、なにとぞ、寛大な御心での処遇をお願いいたしたく存じまするぅ!!」
………………あー……
忘れてたってか、うっかりしてたわ。俺の身体能力向上、確かにパッシブで発動するけど、俺の意識の途切れてる状態だと、発動してないらしいんだったわ。
つまり寝ている間の俺は、ただの白子の子供に戻っちまってるってぇ事な訳だ。
これで、例えば、相手に殺気だとか殺意だとかが有ったなら、確実に目が覚めるんだがね。
いや、それは兎も角、寝ている間は切れてるって事を考えると、俺が無防備に成ってるって、見た目で分かる訳だから、凄く分かり易い弱点だよなぁ。フ〇イズシフト装甲みてぇ。うん。早く何とかしねぇとだな。これ。
さて、そんな事は置いておいて、神御子、ねぇ。つまりは、思ってた以上に、この人、敬虔な光の神の信徒だったってぇ事か。
俺の感覚からすれば、神御子なんてのは低確率だが必ず生まれる事のある、禁色である白を纏って誕生しちまう、白子って存在をその偏見から保護する為の言わば方便の様なものだと思うんだが、敬虔な信者にして見れば、それは確かに"神の色”を身に受けた、『特別な子供』ってぇ事に成る。
何て言うか、ルティシア嬢は、俺達の事情を察してくれているんで何も質問を口にしないし、ヘンリエッタ王女は、何か色々天然だから、もしかすれば、『トール様のお近くにいらっしゃるのですから、これくらい当たり前なのでしょう』とか考えてて、態々話題にしなかった可能性も有るんだが、結局、ラミアーの事について言及する人間ってのが居なかった事も有って、頭から抜けてたわ。
だとしても、この父王さんの反応は、いささか過剰なんじゃねぇかとも思うんだが、それとも聖王国じゃ、この位が当たり前の事なんかね?
俺が白子なのは偶々で、別に光の女神に愛されて生まれたってぇ訳じゃないと思うんだが……
『トールきゅんが居れば、オールオッケー』
……別に光の女神に愛されて生まれて来た訳じゃ、ない、よなぁ?




