当然ちゃ、当然の事なので
「も、申し訳ありません!」
「……ま、まさか、この様な手段に出るとは……クッ! 殺せっ!!」
「死ぬなや。てか、悪いね、厄介事持ち込んだ」
「いえ、構いません。と言うか、むしろ面倒な事に成るのはトール様の方では?」
ルティシア嬢の言葉に俺は『まあね』と答える。現在、公爵邸別邸の前には、聖騎士団が隊列を組んで並んでいる。
そして聖王国側の国王の勅使とかって言う男が、応接間で待っているってぇ状態だ。
この男。聖騎士団団長とかって肩書の男で、名前をシュテープル・ブライセルと言うらしい。
「一応聞いておくけど、本物だよね?」
「うむ、間違いないっ! あの、むかつく顔は彼奴以外ありえん!! クッ! 殺せっ!!」
「殺さんよ?」
俺の言葉を聖近衛騎士団副団長が悔しそうに肯定する。なんで、こんなに死にたがるかね? このお嬢さんは。
で、そんな聖騎士団団長さんが公爵邸別邸まで来た理由は、俺を拘束する為、らしい。まぁもっとも、その前に穏便に話を進める為に、俺に、出頭の要請をして来てる訳なんだが。
何でこんな事に成って居るかって言えば、考えて見れば当たり前なんだけんどもさ。置手紙一つで王女が城抜け出して、公爵邸に行ったまま帰ってこないって成れば、その原因に成ってる人間に鉾先が向くのは、当然の結果なんよね。
こればっかりは、一時的にでも城の方に帰すって事を考えなかったこっちの手落ちではあるし、そもそも、特に隠してるってぇ訳じゃ無かったんで、そりゃ、来るわなって感じだわ。
と言う訳で、こうして別室で一寸作戦会議。背中にラミアー背負って、俺の膝上にはセフィが座ってるってぇ状態なのが、どうにも締まらんが。
因みにイブとファティマは俺の後ろに侍り、足元にはいつもの様にミカとバラキ。ティネッツエちゃんとネフェル王女も、俺と同じソファーで、横に座っている。
そして聖王国側の、ルティシア嬢とヘンリエッタ王女が俺の正面のソファーに、マリエルは、その後ろに。
勅使待たせて打ち合わせってのもあれだが、下手すりゃ、このまま俺が連れて行かれるってぇ可能性も考慮して、その前に今後の方針は決めておきたい所存。
と、ヘンリエッタ王女が勢い込んで口を開く。
「ここは、ワタクシが説得して!!」
「逆に正論で論破される未来しか見えませんて、と言ってもこのままだとルティシア嬢に迷惑が掛かるからなぁ」
『【憤懣】この程度の相手、マイマスターなら秒殺できると言うのに!!』
「やらんよ?」
否定はしないが、向こうは正式に父王様とやらの勅使として来てる訳だし、非はこっちにある。少なくとも強引に俺達を捕え様としない限りは、こっちも力ずくでってのは悪手だ。
「まぁ、こんな事をお願いするのは申し訳ないんだが、根回しの方頼んでよいかね?」
「勿論です。トール様にはお世話になって居りますからっ!!」
「じゃ、穏便に、俺が大人しく捕まってる間に、誤解を解くって感じで」
「で、ですが!! トール様は何も悪い事など!!」
隣国の上位貴族をいきなり処刑って事は無いだろう。少なくとも家の国に話は通すはずだ。逆に言えば、その程度の時間、こっちにも猶予はあるって事でもある。
まぁ、向こう側に何らかの思惑が有れば、それなりの用意はしてるだろうが、その辺りの見極めも兼ねて、取り敢えずは話に乗ってみますか。




