調査交渉
予約投稿ができず、少し遅れました。
空間に存在するだけの黒い穴。ホントに入って大丈夫かって疑問も湧かんでもない。
っても、入らん事には話にならんので、そろそろ行くかね。
意を決しての第一歩。俺達を迎えたのは強い風と一面の雲海。足元は木造のデッキで、眼前にあるのは……
飛空艇……だと!!
え? ここに来てやっと、ファンタジー的浪漫アイテム!!
いや、これまでも聖なる武器やドラゴンなんてファンタジー的浪漫な物自体はあったんだけどもさ、何か実情が斜め上なうえに微妙に“コレジャナイ”感の漂う物ばっかだったじゃん?
だからこその期待値の高さ。
「何だ? ここは……」
『【納得】ここに繋がって居たデスね』
おっと、そう言や、ゴドウィン候も一緒だったっけか。彼の手には聖槍が握られている。ゴドウィン候の後から、彼の精鋭兵が続いてくるが誰も彼もが不思議そうに周囲を見回していた。
「あ!!」
彼の部下の一人が声を上げる。
その方向を見ると、“扉”の反対側、平地と言うか、前世では見慣れた倉庫街。プレハブのそれが立ち並ぶその場所があった。
飛空艇に夢中で、逆側なんか見てなかったわ。
てか、“扉”の向こうとこっちでギャップが酷くないですかね?
何故プレハブ。木造とか石造りとかじゃないんですかね? まぁ、建物としてはプレハブの方が良いんだろうけどさ。
「グルルル!」
敵意交じりの気配に気が付き、一瞬で戦闘態勢を取る。犬達も歯をむき出しにして倉庫街の方に睨みを利かせる。
「敵、か?」
「まだわからん……が、敵意は感じる」
ゴドウィン候の言葉に端的に答える。
「ファティマ、分かるか?」
『【返答】状況からして、警備員だと思います。マスター』
警備員? 兵じゃなくて員? そんな風に疑問に思いながら、こっちに向かってくる警備員を確認する。
……あ、うん。あーうん。警備員だこれ。
水色の制服に赤い棒を手に持ったヘルメット姿の……ゴリラだ。
多分あのヘルメットの中に角があるんじゃねぇの? 想像通りなら
「なっ!! ホブゴブリンじゃと!!」
説明台詞ありがとうゴドウィン候。アレがホブゴブリンか。
あるぅえぇぇ?
上位種に成るほどに人に近くなるんじゃなかったっけ? ゴブリン系。
いや、猿に比べれば人に近いんだろうけどさ、ゴリラ。
だけどなんか違くね? 違うよね? 違うだろう? 違うよ。
俺は、わらわらと集まってくるホブゴブリンの前に立つ。コレが警備員だと言うなら、侵入してきた俺達に対してのリアクションなはずだ。
そもそも、ここの“扉”はファティマに反応したはずだ。なら、無断侵入って訳じゃないだろう。招き入れられたんだし。
いや、カギと権限が違うって事も有るだろうけどさ。
『【警告】あなた方は未登録のまま、権限の無いエリアに侵入してきています。速やかに立ち去らない場合、攻撃を行う場合があります』
「ホブゴブリンがしゃべったぁ!!」
ゴドウィン候が驚く。兵たちにも動揺が広がっている様だな。
いや、一見ホブゴブリンがしゃべってる様にも見えるけどさ、あれ絶対外部スピーカーからだろう。ゴリラの口、動いてないし。
『【説明】あれは機械化警備員デス。ただのサーバーのユニットデス』
「うん? 要はここのメインコンピューターの駒って事だろ?」
『【肯定】その通りですマスター。聖槍、マスターへの説明は私が行いますので、アナタは自身の使用者に説明するだけにしてください』
『【肯定】は~いデス』
とはいっても、ゴドウィン候に理解できるんかね? 俺は前世の知識があるから理解できるけどさ。
うん、案の定、良く分かってはいない様だな。首を傾げてる。
「……ゴドウィン候、つまりは魔物を使役できる存在が、魔法でここから立ち去れって言ってっけどどうする?」
「うむ、この場所は無理でも、ここに来る前のダンジョンは調査したい。その許可は貰えないだろうか?」
登録さえすれば、調査は出来るようだけどな。登録が云々とか言ってたし。いや、登録だけでこの場所に立ち入る権限が貰えるのかはわからんのか。
「ファティマ、ゴドウィン候の言った通りに交渉できるか?」
『【肯定】できます。マスター』
「じゃ、頼む」
俺が、そう言うと、ファティマは交渉を開始した様で、何かキュルキュルと言った音声が流れた後、警備員の方が『【了解】そのように処理します』と言って来た。
交渉は成立だとゴドウィン候に話し、この場所から立ち去る。
ゴドウィン候は、このダンジョンが生きていると分かっただけでも十分な調査結果だとは言っていたが……
飛空艇、調査したかったとです!!




