まだ焦る様な時間じゃない
現在、小国群に入るのは、簡単な事ではあるが酷く面倒臭い。通常、他国へと入国する為には、商業用の入国許可証を持って居るか、国の外交筋からの許可証が必要な訳だが、まぁ、この許可証自体が現状、入手困難だからだ。
まぁ、国内で戦争やってるようなもんだしな。本来ならそう言った許可証の発行なんかをしてる外務省が機能不全を起こしてるんよね。
いや、入るってぇだけなら、本当に簡単なんよ。許可なんざ受けなくたってそのまま国へ歩いて行っちまえば良いだけなんだからさ。
そもそも、国境の関所が機能してないってぇ状態な訳だしなぁ。
ただ、それをやっちまうと、向こうの国のお偉方との交渉なり、対話なりが難しく成っちまうんよね。何せ、不法入国に成っちまうからな。
そもそも、不法入国されたんで、文句を言いに来たってのに、こっちが不法入国なんてしたら、それこそ本末転倒に成っちまうしなぁ。
「そう言う事なら、わたくしがお役に立ちます!」
「いや、その手配はルティシア嬢にして貰ってるからね?」
この天然王女は、俺が何の為に、こんな所まで来てると思ってるんだか。その辺りの事情なんて、最初っからルティシア嬢との手紙のやり取りの中で、話は通してるってぇのよ。
ただ、それでも、許可証が中々取れなかったんで、こうして聖王国内に留まってるに過ぎんのだわ。
「ワタクシの力不足で……」
「そもそも難しいってぇ話は聞いてたから大丈夫だよ」
俺の言葉を聞いて、ルティシア嬢が安堵の息を吐く。本当であれば、そう言った各種許可を得てから向かうもんなんだろうけど、流石に聖王国までの距離が有るんで、取り敢えず、申請だけして向かっちまおうって事にした訳だ。
正直、馬鹿騎士の事だけで、こうしてここまで来たってぇ訳じゃぁ無いんよね。大体、馬鹿騎士については、俺の中の優先度で言ったら最下位な訳だから、本当に、ついでのついでのそのついで位のもんでしか無いんよ。
まぁ、聖王国の様子を見る為と、ルティシア嬢に対して表敬訪問をしたかったってのが一番で、その次はまぁ、何時もの家族旅行だよな。要は家族サービス。
「まぁ、こうやって待ってる時間も、楽しんでるってのは有るんで気にしないでくれ」
「そう言って頂ければ、有難く存じます」
「わたくしに任せて貰えれば、もっと早く処理も出来ますのに……」
「そうです! ヘンリエッタ様の言う通りです!!」
フンスと鼻息も荒く、そう主張するヘンリエッタ王女に、ルティシア嬢も少し困った様な笑みを浮かべる。
いやさ、だから、申請街の時間使って、観光だったり息抜きだたりをして、それなりに楽しんでるんだから、早々急いでるってぇ訳じゃ無いんよね。
ぶっちゃけ、俺としては、別に申請が通らなかったとしても構わんのよ。そん時は馬鹿騎士連れて戻った上で、普通に禁固刑とかにするだけだし。むしろ、家族旅行がメインな気で居るから、別にその辺どうでも良かったりするんよね。




