聖王国へ到着しました
長い船旅も終わり、ようやっとゲンゼルキア聖王国が海の玄関口、フェストランドへと到着。今回もトビウオやらソードフィッシュやらは出てはいるが、その辺はもう船員も慣れたもので、むしろ盾を利用したりして『大量じゃぁ!』とかって勝ち鬨を上げたりしてたからな。
うん。美味しく頂きましたともさ。
それはそれとして、流石に近隣諸国が戦争に成ってるって事で、聖王国も多少ヒリ付いた空気が漂ってるやね。まぁ、聖王国自体が、積極的介入派と消極的介入派に分かれてるだけで、基本的に介入するって言う方向には成っている筈だから、その辺りも関わってるんだろうさ。
てか、小国群、既に6年以上内部闘争を続けてるんよね。何ちゅうか、タイムスパンが長いわ。
「ようこそ、おいで下さいました」
船から降りた俺達を見事なカーテシーで出迎えてくれたのは、俺が挨拶しに来ようと思ってたオルネスティア公爵家の御令嬢ことルティシア嬢。いやいや、最後にあった時には、まだまだ幼さの残る容姿だったと思ったが、今の状態を見ると、素敵な淑女へと成長した様で、おじさん嬉しいわ。
いや、アラシックスに片足突っ込み掛けてる魂の方は“おじさん”って言うより最早“おじいさん”って所なんだろうけんども。
アレだわ、前世だったら定年目前って感じだわ。いや、まだ10年近くあるんだがね。
てか、もうこれで、ここに来た目的の殆どが終わったな。
「よし、帰るか」
「それだと困りますトール様」
「!! 王女様!?」
俺の後ろからヒョッコリと現れた自国の王女に、ルティシア嬢が慌てて膝をつく。
「かしこまらなくて構いません。今わたくしはお忍びで……いえ、お忍びではありませんでしたね。【神託】を預かって旅に出ている訳ですし、何と言えば良いのでしょうか? でも、置手紙一つでお城を抜け出して来ていますし、一応身分は隠して旅して居ましたから、お忍びで良いのでしょうか? ねぇマール」
「構わないと思いますヘンリエッタ様」
何て言うか一寸天然だよな? この王女様。
「ともかく、今、公式の場と言う訳ではありませんから、気を楽になさい。オルネスティア公爵令嬢」
「有り難うございます。ヘンリエッタ王女殿下」
ルティシア嬢の言葉に、ヘンリエッタ王女が、満足そうに頷いてる。いや、遜ったままなんだけど? まぁ、建前上ってだけなんだろうけどさ、これ実際、ため口とか利いたら不敬罪に成るんよね。俺、知ってる。




