一気に終わらせる
上手く纏める事が出来ず、時間が掛かってしまいました。
遅くなってしまって申し訳ない。
まぁ、盗賊に扮してるだけってのは丸分りだって事は置いといて、そうなると、何らかの訓練を受けた集団の一派って所が妥当かね? その上で、こんな暗殺じみた事すらやるって成ると、きな臭い連中か、表立ってだと立派なお題目を持ちながらも裏ではってぇタイプか。
そういう連中だってんなら、敵対している者が投降じみた事を促したとしたって、実際、投降する者なんざ居ないわな。何っちゅうか、この手の輩って、こう、自分達のやってる事は絶対って感じの洗脳だったり精神汚染だったりをされてるのがマストだし。
こういった狂気じみた連中ってのは、自分の持つ価値観が“絶対”だとか思ってる関係上、それに殉じる気でいる上に、他人も従うのが当然だとかって思ったりする。
いや、本当は本能的な部分での忌避感ってのは有ると思うんだ。だからこそ、ソコを突かれると激昂したりする。心の均衡を保つ為に、だ。
追って来ていた者達は、こちらの圧力に手出しができず、ジリジリと隙を探って居る様だが、それでも、その仄暗い瞳の光は、追っていた二人の様子を常に窺っているな。
憎悪だとか敵意だとか、そんな感情は全く見えんのだが、それでもこれは、むしろ、希望とか憧憬……なのか?
ネガティブな感情とは真逆の何かを見出しているかのように思える。
まぁ、その辺りは考えてもしょうがない。どの道、コイツ等から情報が出るとは思えんしな。
「さて、練りあがった」
オファニムのスリットから漏れ出る光が、赤銅に明滅しながら高速で循環する。まだ、少っしばっかりズキズキと頭痛がするが、それだけ負担が掛かってるってぇ事でもあるんだよな。……まだまだ修行が足りんか。
伊達にこんなお見合いしてた訳じゃねぇんよね。なるべく全員を一気にやる為にはコイツが最も適してて、それには【プラーナ】の精製純化が必須だったからな。
俺の出来る技の中で、唯一、広域への攻撃が可能なのがコイツだけなんだわ。
「さぁ、殲滅の時間だ」
『【驚嘆】これが話に聞いていた!! しかし、【プラーナ】の状態は安定している!!』
まぁ、修行結構頑張ったからな。精製、純化、凝縮はスムーズに出来る様には成ってるんだわ。
背後の二人を巻き込む形で【フォートレス】が展開され、その周囲の【プラーナ】が剥離分裂を繰り返す。その剝離した【プラーナ】が更に純化凝縮し、弾丸の様な形状へと変形して行った。
流石の追手達もその表情が驚愕に染まっている。
だがな、もはや色々と手遅れなんだよ。驚愕する追手達とは逆に、犬達は興奮して尻尾がはち切れんばかりに振られているんだわ。
【気配感知】で全ての追手達をターゲッティングし、彼らに弾丸を突撃させる。
ヒュンヒュンヒュンと音を立てて、彼らに弾丸が降り注ぐ。ドドドドドドドドドドドドドドドドドと言う地響きが鳴り、土煙が舞う。
手ごたえはあった。土煙が晴れた時、そこに居たのは倒れ伏した追手達。
動きは無く、感知しても生命反応は無い。
「やった様だな」
「フラグゥ~?」
『ふらぐだぁ』
いやいや、自爆も無かったし、全員を即死させられた、と思うぞ?
「じゃぁ、何で、追われて居たのか聞かせて貰お、う……」
俺が振り向いた時、その視界の端に、木の陰から目をキラキラさせながら、こっちを見るネフェル王女が……
いや、何やってるの?




