ある意味テンプレ
ケルブが展開し、内部のオファニムが露わに成る。その胸部装甲部分が開き、俺はそこに搭乗した。
【プラーナ】を活性化させ、【エクステンド】で、物理的にオファニムと接続される。と、オファニムの全身のスリットから【プラーナ】の赤い光が漏れだす。
「おお!!」
ネフェル王女から、感嘆の声が聞こえる。王女、好きだなぁオファニム。
俺が、オファニムに搭乗するのを見せるのは、勿論これが初めてじゃぁない。この旅の最中、襲い掛かるバイオレンスに対応する為、何度もオファニムを纏って戦ってるしな。
そんな闘うオファニムの姿が、ネフェル王女の心の琴線に刺さったらしい。それはもうズドンッ! と。一発KO。テクニカルノックアウト、判定勝ちってな勢いで。
もしかしたら、今回同行を申し出たのも、自分が戦いたいからってっ部分も有るけど、オファニムの戦ってる姿を見たかったからってのも有るかも知れない。
と言っても、オファニムでの戦闘って、かなり特殊だから、余人に参考にできる所って無いんだけんども。言っちゃぁ何だが、オファニム改とも言えるコイツの制御にも熟れたんで、結構な無重力軌道での戦闘に成ってるから、普通に真似とか出来んのよね。
てか、こんな世界で魔法何て方法使ってすら、空中で戦闘って難しい物らしいからなぁ。
いや、そもそも遮蔽物の無い空中に、回避手段か防御手段がない状態で戦闘区域をウロウロしてたら、撃ち落として下さいって言ってる様なものなんだがさ。
空中の魔物に対しては、基本弓矢で撃ち落とすか、魔法で撃ち落とすか。ただし、そう言った系の魔物って移動速度がめっちゃ早いか、各種耐性を持ってる事が多いんだそうな。つまり、当たらないか、当たっても平気かって言うね。
まぁ、そんな訳で、基本的には空中戦闘なんて概念が無いこの世界では、俺の戦闘は先ず見ないものな訳だし、だからこそ、行えるってぇ人間も居ない。それ故に、参考って物には成らないんだが……
『【思案】だからこそ、見たいと思うのでは?』
ああ、参考にしたいってぇ事じゃぁ無く、言わば珍しい物を見たい的な?
『【肯定】言い方は悪いですが“良い見世物”ではあると愚考します』
成程、そう言う意味で言えば、何となく納得は出来るかな?
それはそれとして、現地に向かいますか。
「トール・オーサキ!! オファニム、出るっ!!」
そう言ってオファニムの背部スラスターを全噴射し、俺は空中へと躍り出る。それと同時に犬達もキャンピングカーから飛び出した。
その後ろから、セフィをおんぶしたラミアーが【念動力】で、空中を走る俺の後ろをついて来る。
既に見えなくなっているが、ネフェル王女も、俺の姿を追って来ている事だろう。
数分もしない内に件の逃走劇が目視できる位置に差し掛かる。追われているのはフードを深く被った子供と思しきシルエットと、そのフードの人物を庇う様にしながら、辛うじて走っていると言った感じの速度の女性……多分。ポニーテールの男でなければ。
周囲を囲みながらも、ギリギリで反応できる様な攻撃を当たろうと当たるまいと、一撃離脱で仕掛けている者達は、その装備こそ、バラバラだし、盗賊なら辛うじて持っているであろうレベルの物に偽装しているが、その動きには訓練された兵士特有の洗練されたソレが見え隠れしていた。
特に、この間相手にした盗賊が酷かったから、その差が余計はっきりと分かっちまうな。
うん、これ、絶対に厄介なやつだ。
そんな事を考えながらも、俺はその両者の間に降り立った。




