大方予想通り
少し考えが纏まらず、遅くなってしまいました。
申し訳ない。
脂下がった笑みを浮かべるオッサンに、状況を把握しきれていないネフェル王女が怪訝な表情を向ける。
俺の方は俺の方で、相手に気が付かない様に精製加速を開始しておく。
「いやいや、善行は積んでおくものですねぇ。こんな幸運が転がり込むとはぁ」
いや、一寸どころじゃねぇ程の耳障りな声だな。酒焼けしてるのか、ひび割れた様な、それでいてネットリとした声だわ。
だみ声ともちょっと違う感じの。
だみ声って、アレでも聞き取れないって事はねぇんよね。それに対して、酒焼けの声って、変にビブラート掛かってて、聞き取り辛いんよね。良く、こう言っただみ声っぽい声をガマガエルの様なって評する事が有るけど、ガマガエルの声ってむしろ可愛いからな? 田舎育ちの俺、知ってるぅ! 取り敢えず誤った知識広めたやつはガマガエルに謝っときなさいな、と。あ、同じ感じでヒキガエルも引き合いに出される事が有るんだが、ヒキガエルだけに……うん、済まんかった。ガマガエルとヒキガエル、基本、同じ種類の別名ってだけだからね?
それはそれとして。
「幸運?」
「ああ、いえいえ、こちらの事ですねぇ」
いや、ニコニコしてる様に見えて、目ぇ笑ってねぇんだが? てか、護衛っぽい奴等に目配せしてるけどさぁ。見た感じ、その護衛の半分は野盗にやられてる様だけど、その野盗やったの、多分、家のウリとラファだよね? 何で喧嘩売って勝てるとか思ってるんじゃろ?
護衛達の出来そうな連中の方は、オッサンの目配せで緊張感が高まったが、そうでもない連中は、やや下卑た笑みを浮かべている。
まぁ、残ったのは出来そうな連中の方が多いんだけんどもよ。
「ワタクシ、普段は王都の方で商売を行っている……」
そう言いながら、首をクイッと動かす。それに応えて、護衛が矢を放ち、ナイフを投擲する。
まぁ、予想通りの行動だよな。
恐らく、イブが張ったであろう【魔法障壁】が矢を防ぎ、俺と王女たちの方に放たれたナイフは、そのまま叩き落した。
「な、何だとぉ!!」
不意を打った心算なんだろうが、見え見えの手に引っかかる程、馬鹿じゃない心算なんだわ。
「王都、王都ねぇ」
この手の連中は、前に一掃したと思ったんだがなぁ。また出て来たって事か?
「ぐ、う、こう成ったら、しょうがない!!腕の一本や二本くらいは覚悟して貰おう!! やれ!!」
いや、不意打ちでどうにもならなかった相手が、正攻法で何とかなるとか、有る訳ねぇだろうが!! 愉快な思考してるとは思っていたが、ここまでとは!!
まぁ、良い、ずっと馬車の中で体が鈍ってたところだ!! ちょっと運動不足解消に付き合って貰おうか!!




