ある意味決まって居た結果
遅くなり、済みませんでした。
色々と納得行く様に書き進められず、時間が掛かってしまいました。
申し訳ない。
「いえ、それなりの成果を出している冒険者ではありましたが、如何せん弱かったので」
「おまいの価値基準そこだけかよ」
ヤダもう、この脳筋王女。強さだけしか見ないとか、王族としてどうなんよ。いや、逆に強い人の居る国に嫁がせれば文句も言わんだろうって事だから、政略結婚とかは相手を選別し易いのか?
『【嘆息】それ、マイマスターにも刺さりませんか? 強い人の居る国に嫁がせると言う件が特に』
チラッと思っちまったよ。それ、今回、俺んとこに弟子入りして来たのだって、その伏線なのか? ってさぁ。
俺とファティマが、【念話】でそんな事を話してるだなんて思っても見ていないのだろう。ネフェル王女は困惑している俺の様子になんて全く気が付かずに言葉を進める。
「ですが、結果を出すだけの事はあり、中々に含蓄のある言葉だと思ったので、時折、使わせて貰っている訳です。『むしろ後悔に向かって行く』つまりは困難に自ら飛び込んで行くと言う事でしょうか? 私、ワクワクしてきます!!」
含蓄、有るか? 結構な暴論だと思うんじゃが? 『何をしてても後悔するなら、むしろ自ら後悔しに行く』とか。
元々この言葉を言っていた冒険者とやらは、『自ら困難に向かって行く』と言うよりは、『兎に角やってみよう!』的な感じで使ってたんだろうが、だとしても、この言い回しは無いだろうに。
現実問題として、俺にはネフェル王女の行動を縛る権利も無ければ実際にどうこう出来る手段もないんよね。と言うより、物理的な手段を使う方がむしろ拙いって言う。
だから、王女が勝手について来たとしても、それを止めさせる様な事も出来なければ、その事について非難する程度は出来るだろうが、法的な部分で何らかの処置をさせるだとかって事も出来ない。
何せ、実際、知り合いの旅を後から追っかける事についてなんて、何の罪にも問う事なんて出来ないんだし。
前世でなら『迷惑防止条例違反』とかって物もあったかも知れんが、この世界に、そんな物なんざ無いからなぁ。
そんな事を考えて俺は溜め息を吐いた。
何にせよ、王女が『付いて来たい』とか言った時点で、俺に取れる手段なんざ無かったんよね。それでも渋ったのは、態々戦争をしている場所に王女を連れて行く事に対して思う所があったからで、それはつまり、“いざ”って時に、“護る”対象に王女を入れて無かったからでもある。
それ以外の同行者に関しては、最低限自分の事は護れる程度の能力は有してるし、その上で、俺が『何が有っても護りたい』と思ってる対象でもある。
それは、“何か”があった時に、どんな償いでもするつもりで居るし、俺がさせて欲しいと思っているからでもある。それはつまり逆説的に、王女に対して色々な意味で“責任”を負いたく無いってぇ事な訳でもあるってぇ事だな。
「……正直、俺はネフェル王女殿下を連れて行きたくはない。それは、俺が、貴女に対して色々な意味での責任を負いたくは無いからなんだわ」
「っ、それは私の事を嫌っていると言う事なのですか?」
「いや、単純にネフェル王女殿下の人生を背負うってぇ覚悟が無いってぇだけの話なんだよね」
「人生……」
単純に旅をするってだけなら、そこまで考えないだろうが、今回行く聖王国及び小国群に関しては、確実に厄介事に巻き込まれるだろうって事も決定してるしな。
聖王国ではラミアーの事で、小国群では馬鹿騎士の所為で。
そもそも弟子って言ったって、精々特訓できる場所を提供する程度の事しかしなかった訳だし、第一に、俺の戦闘は余人に教えられる類の物じゃ無いから、その程度の係わりしか持たないだろうって計算も有ったから受け入れた面も有るんよ。
だが、今回の旅は、そうじゃない。だが、ここで無責任に成れる程、薄情でもないつもりではいる。
「一応聞いとくけど、俺に同行したいってのは、どうしてもか? そしてそれは、王女個人の意思としてか?」
俺の目を見るネフェル王女の顔つきが変わる。多分、俺が言外に込めた言葉の意味も理解したんだろう。しばしの逡巡。しかし、王女はハッキリとした意思を込めた瞳でコクリと頷いた。
「分かった。なら、同行を認めよう」




