心機一転をされたぞな
俺の想定していた相手が、国内外にその名声がとどろき響いている、バフォメットことテモ・ハッパーボだと聞き、ネフェル王女はさらに目を丸くしていた。
あの山羊頭、山羊のくせに、人間界で“名声”の方がとどろいてるんだもんな。流石はSランク冒険者。本人、あんなに性格破綻者なのになぁ?
いや、そもそもの性格は多分生真面目だった、んだろうなって所がちらちらと見えているんよね。ただ単に弱者を甚振るって様な事は嫌ってたり、努力や向上心と言った物を好ましく思ってたり。
ただなぁ、現状、魔族に成ってるって所で、そう言った部分も、“食欲”の一部に成っちまってる関係上、素直に評価できなく成ってるって部分はある。
そもそも、バフォメットも魔族である以上、元々は人間だった筈なんよね。何せ、その性格的な物を【邪神】に見込まれちまって、その【邪神】から【加護】を与えられちまったってぇ存在が“魔族”な訳なんだから。それはつまり、そう言った部分に人間だった頃の“残滓”が残っているって事だろう。
ただ、“改教”をすれば、一応、魔人族ってぇ、人間よりの存在に戻れるってぇ事なんだから、【邪神】からの【加護】さえ無くなってしまえば、一応、人間に戻れるってぇ事に成る。まぁ、魔族だった頃の名残は残っちまうらしいがな。
もっとも、その、元々の性分みたいな物を【邪神】に見込まれての魔族化な訳だから、そこから“還って”来るってのが、とてつもない難易度だってのは俺にだって分かる。
かつて、魔族から魔人族へと“還った”魔人族の祖先達は、どんな思いを抱えて、人間に戻る事が出来たんだろうかね。それまでの自分自身の性格を否定する程の、さ。
でなければ、【邪神】からの【加護】を失ったりしないだろうしなぁ?
それはそれとして、演舞ってかまぁ、俺の型の訓練を見たネフェル王女は、『新たな高みと言うものを見せて貰いました!! 今の私にはかなり厳しい道程ではありますが。目指すべき頂と言うものが見えた様な気がします!!』とかって、俺と同じとはいかなくても、なるべく近い状態に至れる様にと、心機一転して新たに訓練を開始した訳だがよ……免許皆伝しようと思ったんだがなぁ。どうしてそうなった。
『【苦笑】アレを見せつけて於いて言える事ではないですよ? マイマスター。ネフェル王女程、向上心の有る前向きな人間であれば、奮い立たないと言う事など有り得ませんから』
……そう言うものかね、まぁ、ネフェル王女が向上心の化け物なんだろうと言う事は良く分かった。てか、聖武器が、好意的だって事は、つまり、才能も実力も充分あるってぇ事なんだな。
取り敢えず、イブに【身体能力上昇】の効率の良いやり方を聞きに行ってるみたいだわ。こう言う、強く成る為になら、10才以上年下だろうと、どん欲に聞きに行ける辺りは好ましい所だぁね。
ただなぁ、イブさん結構な天才肌で感覚派なんで、多分、教える方には向かないんよね。一応、聖槍に理屈も教えて貰ってる筈なんだがなぁ。
「【魔力】、を体中に、ギュン、って、して、ソレ、をこう、グッと、集中」
「え? あ、はい? ギュン? ってして?」
「違、う。それ、は、ヒュルン。こう、ギュン」
「あ、えっと?」
案の定、結構な困惑した感じで眉間に皺が寄ってるわ。
……うん。頑張れ!!




