小国群から来た男
件の生ごみは、リック・ドーンと言う、一応、騎士爵の男で、小国群から来たんだそうな。
驚いた事に、小国群は貴族よりも騎士の方が権力を持って居るそうで、騎士爵が世襲制に成ってるんだと言う。
つまりは永代騎士。
そんな騎士の中でも上級中級下級って区別が有って、上級、中級騎士ともなれば、自分の領地とかも持ってるらしいんだわ。
ただし、中級騎士の領地なんかは上級騎士から下賜されてるもので、税金何かは上級騎士に納税しなくちゃいけならしいんで、実質管理を任されてるだけって事っぽいけどな。
そう言った上級騎士の領地も国と言う区分なんで、小国群は、そう言った国の集まりって事に成るんだそうな。
因みに、一応いる貴族連中ってのは、ほぼ全員が法服貴族で、天王って言われている王族の血族しか居ないんだとか。
なんで、その天王の治める王都とその周辺ぐらいにしか貴族ってのは存在していないって話なんだわ。
そんななんで、一応、この国の騎士は天王の配下って事に成ってるけど、天王だって、早々、騎士達に上から目線で難題を吹っ掛けるような真似なんて出来んし、貴族は実質、お飾りの貴族でしかなく、騎士達の方が幅を利かせる結果に成ってるってぇ訳だな。
『【解説】それでも、一応、上級騎士の任命権は天王が持って居ますから、剝奪されれば、騎士ではなくなってしまうと言う事も有ります』
「ああ、そう成ると、ただの平民って事に成るもんな」
平民って事は、どれだけ力を持ってたとしても、騎士としての特権は使えなくなるしなぁ。
騎士だからこそ、例えば何がしかの故が有れば、他者を切り捨てたとしても許される事も有れけど、平民がやったら、どんな理由があったとしても、ただの人殺しだ。
第一に中級下級の騎士の任命権は上級騎士にも有るらしいが、そんな上級騎士だったとしても、その地位を剥奪されてしまった後は、そう言った中級下級の騎士の方が権威としては上に成る。つまりはそこで下剋上が起こるって事な訳だ。
そりゃ、一応にでも尊重しなきゃいけんわな天王。
そんな小国群、今、覇権に手を掛けてるのは三大国らしいんだが、それでも、その覇権に抗っている小国もまだまだ多いらしい。
いわば、ゲリラ軍と言った所か。
で、その生ごみ、移民団に混じってこんな所まで来た理由が、あのルティシア嬢が頼りにしている貴族が他国に居るって事で、その貴族に助力を願おうとってか、『自分達に力を貸せ!!』って言いにというか、協力させる為に来たらしい。
取り敢えず、ファティマの話を聞いて、俺は大きくため息を吐く。
「……だったら、自分に手を上げた子供の事をしつこく探してないで、とっととその貴族に協力を仰ぎに行った方が良いんじゃね?」
『【苦笑】お気づきでしょう?』
まぁ、どっちも俺の事だよな。
そのリック、アイアンクローで気絶させられた事が、よっぽど腹に据えかねたらしく、激昂して、俺の事を尋ねまくったんだそうな。
ただ、どう見たって俺に害を成そうとか思ってるのが読み取れるから、その場で目撃した人達は、揃って口を噤んだらしい。あの時、リックは気絶していて聞いてなかったらしいが、他の人間は、俺がこの領地の領主だって聞いてた訳だしな。
まぁ、戦火で焼け出され、難民としてこの領地まで来て、ようやっとまともな生活を送れるかもって時に、あからさま悪意を持つ奴に、これからお世話になろうって人間を差し出そうとは思わんわな。
特にリックとやら、戦火を拡大させてる側の人間って事で、移民の人間達に悪感情を持たれてるってのにも関わらず、強引について来たんだそうだし。
てか、何を考えてたら、他国の貴族が協力なんてするとか思えるんじゃろ?




