模擬戦をしてみる
色々あって頭が回ってない状態の様です。
遅くなって申し訳ない。
ごく控えめに【殺意】を乗せて視線を逸らしつつ、足の方向をほんの僅かだけ外側へと向ける。たったそれだけでネフェル王女は、俺の視線を避ける様に逆サイドへと踏み込み……
「はい、掛かった」
「ぷぎゃ!」
戦斧を模した木製の武器で王女の頭を叩く。家の騎士団の団員と模擬戦やりまくったんじゃ無かったんかね? 剣筋が多少鋭く成った位?
「相変わらず、フェイントに弱いな」
「師匠のフェイントは本気と見分けがつかないじゃないですか!!」
見分けがついたらフェイントに成らんじゃん。てか、この物言いだと、騎士団の連中とやってる時ならフェイントに引っかからないって事なのかね?
「俺のフェイントが分かる様に成れば、一段階上へ行ける……と、思うぞ?」
「そうれは、そうかもしれませんね」
「まぁ、慣れたら慣れたで、次は本気のフェイントと偽のフェイントの見分けを付けられる様に成らないとなぁ?」
見分けがついても、反応しない様に成らないといけないしな。下手にフェイントが見えてると、つい、それに反応しちまうからなぁ。
「……剣の道は険しいのですね」
「俺の使ってるの、基本、戦斧だけどなぁ」
「あ! いえ、決して剣だけが特別にと言う訳では!!」
いや、言いたい事は分かってるんだ。別に攻めてるって訳じゃぁ無いし。そもそも、最近使ってるの槍だし。
てか、何時に成ったらファティマは戻って来るんじゃろ?
それは兎も角、約束ってか、そもそも、たまに模擬戦をするだけって条件で、王女様の弟子入り認めて見たんだけんどもさ、そう言えば、何処まで行けばこの修行終わるんじゃろか?
あれか? 俺が『今日から貴様も免許皆伝だぁ!!』とかって言えば、終わりって事に成るのか? まぁ、侍女さん達を文官として借りてるってぇ状況なんで、ひと段落つくまでは、終わりに成ったら困るのはこっちの方な気もするけんどもさ。
少なくとも、王女さん所の侍女さん達の下に付けた、家のメイド達がノウハウを身に付けるまでは現状維持って事に成るのかなぁ。
いや、別に、仕事の仕方覚えたらお役御免にしても構わないってぇ訳じゃ無いんだけんどもよ。流石に、王女さんの方の修行が、有る程度の目星が付くまでは、家で稽古付けて貰う心算では居るさね。
「んじゃ、もう一本行っとく?」
「はい、お願いします!! 師匠!!」
あれだよね、『師匠!!』とか言われると、つい『馬鹿弟子がぁ!!』とか叫びたくなるよね、いや、言わないが。
一応ではあるが王族相手に、そんな不敬は出来ませんて。
てか、やっぱり太刀筋が素直過ぎるんだよなぁ。まぁ、この状態のまま、緩急付けるだけでも充分フェイントには成るんだけんどもさ。
ただ、王女、それをやるには筋力が足りないんよね。急制動を実現する為には、相応の筋力が必要だし。
王女の剣を流し、絡ませ弾き飛ばす。一連の攻防で既に息が上がってる王女を見ながら、(持久力も必要だなぁ)とか思ったわ。




