新年式に向けて
「ふむ、何と言うか新しい世界が見える様ですな! 師父!!」
「もう、意味が分かんねぇよ」
俺達は今、新年式用のドレスを作ってもらう為、服飾の職人に来て貰ってる。ネフェル王女の為のドレスをだ。
いや、王女だろ? 王族だろ? パーティー用のドレスが無いって、どんなんやねん。
因みに俺達の方のドレスやら式典服やらは、領地で作って貰った。一応だけど、家の領地、コボルト達が育てたバロメッツから採れる『ゴールデンウール』や、ヴィヴィアンの知識使って集めた麻や綿で作った織物も、それを使って作った服も、売りの一つなんだぜ?
服の方はコボルト婦人会の面々が、装飾やら革靴やらはドワーフ連中が制作してくれて、家のエクスシーア商会では、結構なメイン商品の一つと成ってるんよね。
ちなみに、ドワーフ連中が使う鉱石やら宝石は、コボルトの男衆が採掘してくれている。採掘に関しちゃ、コボルトの右に出る者なんざ、居る訳もないんだわ。そして革は、言わずと知れた冒険者達が狩って来た魔物の素材だ。
その俺達の分のドレス類は、第二夫人が持ってきてくれたんよ。俺だって、まさか、こんな時期から王都入りしなくちゃ成らなくなるなんて、思わなかったから、これには助かったわ。
全く、国王陛下はなぁ。全く。
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ネフェル王女は、言わば押しかけて来たってぇ身分な訳だが、それでも腐っては王族。来たからには最高の待遇でもてなさなきゃ成らん。
だからこその夜会招待な訳で、そのパートナーには王女たっての『お願い』で、俺が指名されたんよね。ちくせう。
実際の所、サウペスタ王国は事実上の属国となる訳なんだから、そこの王女と成れば、王族の格としては家の国の方が上なんだけどね。
『釣った魚には餌をやる』主義の腹黒オジサンにとっては、今は『恩を売っておく』ってぇ段階らしい。
それはそれとして、今、屋敷の方に王都の服飾店の商人を呼んで、ネフェル王女の採寸をして貰ってるってぇ訳だ。
本当はエクスシーア商会の人間呼んで、作って貰うのが理想なんだろうけど、コボルト婦人会の本拠地はオーサキ領な訳だ。つまり頼んでも、作り終わって納めて貰った時には、新年式は終わってるってぇ事に成る。
なんで、仕方が無いから、王都の有名服飾店を呼んだ訳だな。
こういう時に使ってこその、貴族ってぇ階級だよね。




