授業を開始する
動きの緩急、フェイントを織り交ぜたステップ。どれも高いレベルで纏まってるってのは分かる。
武者修行なんて物をやるくらいだから、もっとも破天荒なタイプなのかと思ってたんだが、戦い方はオーソドックスな印象。何と言うか、普通の美闘士。ただし、クイーンズでもブレイドでも無いけど。あの国、王太子いたっけ?
居ても居なくても、武者修行とか許してる時点で後継ぎ候補とは考えて無さそうだけど。
どの道クイーンには成らないから、クイーンじゃぁ無いって事で、あえて言えばプリンセスメイス? ……ダンジョン探索には行かない事をお勧めしとこう。ダンジョンズ&(以下略)みたいに成るぞ、と。
フェイントにも引っかからず、飛び込もうとすればその先を潰される。かなり焦れて来てるっぽいな。恐らく左手の痛みも、無視できない程にひどく成って来てるんだろう。目に見えて顔色は悪く、脂汗が酷く。ただ、これだけ攻め気を見せている以上、兵士長も止める訳にはいかないんだろう。今の所は。
これ以上悪化してる様に見えれば流石に止めに入る筈だ。
例え、左手の罅は分からなかったとしても、眉間からの流血は派手に見えるからな。
その事はネフェル王女も分かっているのか、さっきよりも攻めようとして来る回数が多く成って来てる。
ただ、その為にフェイント何かが疎かに成って来てるんで、むしろ動きが単調に成ってるんだがね。
単調な動きなら、こっちはもっと動き出しを制するのは易くなる。
そうなると更に王女は焦れてのスパイラル。
思考が煮詰まっちまったら、一旦引く事も考えなきゃいけんのだがね。さっきは引く事が出来たのに、今出来ないのは、『焦り』で視野が狭まってるからか?
それ以前にどうもこの王女様、『メイスで攻撃する』って事に考えが居ついちまってるみたいなんよね。
俺達がやってるのは“試合”であって、『メイス攻撃ゲーム』って訳じゃない。
メイスを俺に当てたからって、勝ちって事には成らないんよね。
むしろメイスを使おうが使わまいが、俺を倒せれば勝ちな訳だ。
だったら、むしろメイスで攻撃なんざしない方が良いんよね。
「これは、授業料だ」
俺は、そう呟くと、手に持って居たハルバードを王女に向かって投げた。




