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長い歴史ってのも確かに重いんよね

「優秀で欲が無いなど、他の者から見れば脅威でしかないのだがな」


 溜め息交じりに国王様(セルヴィスおじさん)がそう言う。

 まぁ、国で権力を持ってる貴族の人達から見れば、そう言うものだろうな。これが単に自分の視野が周囲にしか向いてない結果だったとすれば、確かに愚か極まりない様に見えるとは思う。

 とは言え、身近な幸福だけを護りたいって思うのは間違いじゃあないんよね。それはそれで幸せを突き詰めた生き方ではあるからなぁ。


 ただ、貴族ってぇ立場に成れば、自身の庇護下にある民の幸福までを視野に入れなきゃいけないし、それに対しての万難を排する為の視野の広さってのは必要だ。

 それを成す為に権力も資金も必要なんだから、それを手に入れられるチャンスに手をこまねいていて、取りこぼすなんてのは愚者の行いだろうし、あえてソレをやらないなんて選択をする人間なんざ、理解不能って類の相手だろう。


 『何を考えているか分からない』から脅威って面も、確かに有るだろうけど、大概の人間ってのは、自身の中にある“常識”ってヤツが絶対の指針に成る場合が多いから、そう言った人達から見れば、無欲に栄光を逃す奴ってのは理解できないだろうし、そう成ると、そう言った場合『態々、今回のチャンスを見逃す程の、別の利益を手にしようとしてるのだろう』ってな考えに成る。そうでなければ()()()()からだ。“常識”なんてのは、『特定多数』の“共通認識”でしか無いんだがね。だが普通の人達からすると、常識(ソレ)が“絶対のルール”みたいに思っちまう。


 それはそれとして、『優秀で欲が無い人物』ってのは、それを使う側から見れば、使い勝手の良い“駒”になる。だからこそ重用するし、愛着も持つ。ただそれだけの事ではある。

 にも拘らず、重用()()()()側はそのプライド故か常識故か、その事を理解しようとしないんよね。


 ただし、今回俺が爵位を断るのは、俺にメリットが全くないからだし、これ貰っても年金が増えるってだけで、その代わりに飛び地で土地を与えられるか中央で宮仕えをするかって言うデメリットの方が大きい状況に成る上に、他の貴族連中に妬まれ嫉まれするって言うね。


 もっとも、それ以前に権力や何やらは別にいらないってのも有るんだけんども。

 国王様が権力でこっちを押さえつけるタイプの人間だったら、そもそもこの国になんざいないしな。正直、生きにくい土地で暮らすくらいなら、別の所に行くねんで、って感じだしな。


 領主なのに無責任だと思われそうだけど、そもそも、最も基礎的な基盤は作ってる訳だし、俺が居ない程度だったら街の維持に問題が無い様なシステムを構築してきてある。

 今以上発展させようとか思えば、色々と手を加えなきゃ成らんだろうけど、現状の規模で行くなら何の問題なんざ無いだろう。


 俺達自身も、特定の共同体に依存しなけりゃ生きられないって事は無いし、ぶっちゃけ、全くの0からスタートしたとしても、問題ないだけの能力はあるつもりだしな。


 そんな訳で、俺にはこれ以上の、そう言った権力なんて物は、むしろ柵を多くするだけの物でしか無いんよね。

 多分それに関しちゃ、獣人の王国で人脈を築けた辺りからも、充分だって結論は出るだろう。


「何と言うか、これ以上の権限を俺に与えたく無い連中からすれば、願った叶ったりの筈なんですがねぇ。向こうにして見りゃ上を目指さない方が可笑しいんでしょうけど」


 ただ、『足るを知る』ってだけなんだがねぇ。こう言った格言って前世の西洋でもあった筈なんだけど、この世界には無いのかね?


「なに、自分達よりも優秀で権力を持つ者が増えるのを恐れておるのよ、連中は。だからこそ、こぞって王子達に娘を宛がい、王室と同等の……いや、それ以上の権力と影響力を持とうと躍起に成る」

「そんなに王様になりたければ、独立して自分の王国でも作れば良いのに」


 俺がそう言うと、国王様は呵々大笑した。


「ソレが出来るのもまた、真の強者ではある。だが、連中は歴史の重みも、それ故の伝統の力も知っておるからのぅ、そう言った物を手放そうとは思わんだろう」


 まぁ、確かになぁ。

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