空を覆う
考えてみれば、直ぐにわかる様な事だったと、今更に思う。
もしかしたら、ここ数日の対応が緩すぎて危機感がマヒしていたのかもしれない。
「聖弓オォォォォ!!!!」
『【了解】【結界】!! シェルト・ウェル・コクット・バルティ・アズル・テオ・グラッパ・メイウルト・デケン、魔法名【サンクチュアリ】ですわぁ!!』
聖弓が、王都を包み込むように【結界】を発生させる。
いや、疑問には思ってたんだ、削られた分の魂は、何処に行ったのかってのはよ!!
「やってくれる」
思わず乾いた笑みが浮かぶ。どこからどこまでが向こうの手の内だったんだか、全く気持ちよく向こうの掌で弄ばれてたって訳だ。
俺が前に体験した時は、巨大な魔法陣が必要だったはずだ。多分、それは冒険者ゾンビが用意したんだろう。
全ての冒険者を網羅出来てる訳じゃないし、全員を記憶してる訳じゃぁ、もちろんないが、それでも、あの時ギルドで見た連中の何人かは未だ目にしてない。特にヴォルフガングをあの時以降、全く目にしてないしな。いや、不自然って程じゃ無いんだが、ここに来てまで、全く見た人間が居ないってのもどうだろうって、程度の事ではあるんだが。
ただ、今日に至って唐突に疑似ゾンビの活動が活発に成ったのも、単純に、俺達をこの場に釘付けにする為だったのだろうと思えば、その可能性は高いとも思える。
あの時、何人もの子供達の【オド】を魔法陣の作成に使用し、その上で“生贄”を必要としていた。今回も同じだったとすれば、この疑似ゾンビと成っていた市民の何人かは既に犠牲になっているかもしれない。
俺が、そんな思案に耽っている間にも、王都の空に罅が入り、空間が割れる。
「皆、気をしっかり保て!!」
今から注意喚起をしている時間は無い。後はただもう、これで犠牲が出て居ない事を祈るしかない。
暴力的な気配が、世界を犯し、侵食する。
まともに精神を護る事の出来ないであろう、疑似ゾンビ達が、崩れ落ちる。
異質で、相容れないと感じる気配が、こちらを視た。
―邪神―
背筋にゾワリとした感覚。俺は二度目ではあるだが、それでも慣れると言う事は無い。だが、耐えられる。
見れば、犬達は苦しそうに表情を歪めながらも耐えている。聖武器’Sと魔物’Sは言わずもがな。
イブとティネッツエちゃんは若干顔が青いか。
ウィキシュは……オチる寸前と言った感じだ。脂汗が酷い。
聖弓の【結界】内に居てこれかよ! 【邪竜】の時ですら、ここまで酷いプレッシャーじゃなかっただろうが!!
これが、正式に招待された、召喚だからか? 前の時のソレは、【邪神】が気まぐれに覗いただけでしかなかったって事か?
それでも、このままにしとくってぇ訳にゃあ、いかねぇよなぁ?




