吶喊
「むぅ!!」
『【吶喊】デェス!!』
城門が開いた瞬間、イブとジャンヌが【魔力】をぶっ放す。【純魔力】は、同じ純粋な【魔力】にしか干渉しないが、普通の【魔力】は、物理的に影響を与えるからな。
ぶっ放された【魔力】によって、城門前の疑似ゾンビ達が吹き飛ばされ、空間が開き、俺達は、そこに飛び込んだ。
「凄い……」
「流石はイブ様だ!」
「イブたんハァハァ」
魔導師団から感嘆の声が上がり、イブが『むふぅ』と鼻息を荒くしている。渾身のドヤ顔。うん、可愛い可愛い……ただ、今、ハァハァとか抜かした奴は、後で体育館裏だな。
何かもう、色々手遅れっぽい魔導師団紳士をよそに、派手に市民を吹っ飛ばした俺達に対して、魔導師団団長が質問を投げ掛けた。
「吹っ飛ばしてぇしまってぇ、良かったんですかぁ?」
「今回はな。んじゃ、ラミアー、セフィ頼む」
「らじゃ~、りょ~か~い」
『ま◯~く~かんに、ひきずりこめぇ~』
俺の声でラミアーが【念動障壁】を張り、セフィが蔦を生やして数人の疑似ゾンビを絡め取ると、バリアの中に引き摺り込んだ。いや、マク◯空間て。
「じゃ、洗浄ヨロ」
それは兎も角として、引き摺り込んで拘束した疑似ゾンビを魔法師団の皆さんに洗浄して貰う。
今回、『一旦こそぐ』ってぇ過程をすっ飛ばす。回復させる事で魂が削られるなら回復させなきゃ良い。
そもそも、行動不能にして城内に搬入する理由は、こちらの安全を確保しつつ恢復させる為な訳だ。その『行動を不能にさせる』段階で、魂と等価交換で回復させられるって言うのであれば、そこの部分を無くしちまえば良いって話なんだわ。
その代わりに安全の確保については別の方法でやれば良いって事で、ラミアーとセファにご出馬願った訳なんよね。
そもそも、ラミアーは【超能力】使いで、セファに至っては植物使いな訳だからな。実は今回の作戦とは相性があまりよくは無いんよね。
大体、ラミアーについては、俺が直接戦闘をするか、危機に陥りそうでもなければ、積極的に力を貸そうとはしないからなぁ。まぁ、こっちの事を気にかけててくれるってことには、感謝しか無いんだがね。
それはさて置き、今回は後で【プラーナ】注入をタップリじっくりまったりやったげるってぇ事と引き換えに、協力を仰いだ訳だ。
多分、真摯に“お願い”とかすれば、力に成ってはくれそうなんだがね、俺自身がそう言う無償の厚意ってのがあまり好きじゃないから、対価でって事にさせて貰ったんだわ。とくに、お互い対価を用意できるってぇ場面だしな。
と言う訳で、ラミアーの【念動障壁】で安全地帯を確保しつつセフィに拘束をして貰う事で、城内に引きずり込んだのと同じ安全の確保を行ったと言うていにした訳やね。




