リスクは小さく成果は固く
疑似ゾンビの討伐ってか治療は俺達と魔導師団、そして獣人の王国、兵士の皆とで協力して行う。
手順としては普通の【純魔力】放出で、幾人かを昏倒させ、そのうちの何人かを城内に緊急搬送。その後【圧縮魔力】の高圧洗浄……浄化の方が聞こえが良いか。高圧浄化で、魂の浄化を施した後、俺と犬達が魂の恢復をする。
その繰り返し。
反撃だぁーーー!!!! とか言った割には、地味な作業な事この上ないが、反撃だからって派手にやれば良いってもんじゃない。リスクは最小限に、かつ、効果的に。
これ、狩りと一緒なんよね。
狩りをする時には、狩る対象を調べて、相手の習性を熟知した上で、自身が怪我なんかを負わない様に慎重に行動をするのが、ある意味当たり前。
確かに前面に出て、相対するってぇリスクを負わなけりゃいけない場面ってのは有るんだろうけど、それは、その後に何らかの策だったり罠だったりが有る場合であって、無策で目の前に出る何てのは愚の骨頂だし、最終手段に過ぎないんよね。
出来るのであれば、獣人の王国王城側に被害が出ない様にするのが最善だし、そう成る様に動かなきゃいけない。
とは言え、リスクが全くないってこたぁ無いし、特に回収……じゃなくて搬送の為に城壁外に出る兵士さんの負担は大きい。
『住民を元に戻すお手伝いなんですから、当然ですよ』ってのは兵士長さんのお言葉。
治療した住民は、放置も出来無いんで、城内にある宮の一つを使用して軟禁状態。流石に、そもそも反王国的な活動をしていたとまではいかなくても、少なくとも容認や応援をしていた連中を野放しにするほど阿呆じゃない。
それに、負傷者の中に間者なんかを紛れ込ませるってのは常套手段だしな。なんで、城内の兵士の人達にも、その可能性は示唆してあるし、患者となった元住人をお世話する使用人さん達にも、その辺りの危険性は周知している。ついでに言えば、そう言った使用人さん達は基本的に自衛の出来る人達を選抜して貰っても居る。
若干、警戒し過ぎな気もしないでもないが、助けたからと言って、必ず感謝されるなんて事は無いし、同様に、必ずしも改心して頭を垂れるなんて事は無いんよ。悲しいけどね。
本格的な浄化治療を開始した事で、城内の捕虜と言うか何と言うか、まぁ“元”疑似ゾンビの連中が増える事に成る訳だ。
そうなると、当然だが衣食住をこっちで賄ってやらなくちゃいけなくなる。衣住は兎も角、食はなぁ、どうしてもなぁ。【魔力】で無理やり補って食べなくても良いようにするってやると、そりゃネクロマンサーと同じだし、かといって【プラーナ】でってのもまた違うだろうし。
もっとも、そう言う事も有るから聖女さんと打ち合わせをしてきたってのもある訳だし。
うん。食料関係については、定期的にエクスシーア商会の関連商会から購入出来る様に手はずは整えてある。もっとも、その所為でエクスシーアとマァナには、一寸ばっかし骨折って貰ってるけど。
いや、エクスシーアは『それがご主人様の御心ならば』とか言ってたけどさ。マァナの方は『トールだし、仕方ないよね』みたいな。
……いや、良いんだけどね。




