反撃といこうぜ
炊き出しを行っていた避難キャンプから戻って、数日が過ぎた。状況的には膠着状態と言った所だろうが、それでも俺の心情的には、あまり思わしく無いって感じの状況だった。
「……あれで、“生きてる”ってのがな」
獣人の王国、魔導師団の連中は、イブとジャンヌの指導の元、何とか【純魔力】の放出を行えるようになり、幾度かの撃退も行っている。疑似ゾンビの回復状況的には、最初の頃と変わらず、2、3日で回復しては王城に押し寄せてを繰り返してる訳だ。
ただ、回復し襲って来る度に、目は落ち窪み、頬がこけて死相が色濃くなって行く。
『【予想】多分、魔族本人の【魔力】を温存する為に、疑似ゾンビに成っている本人の“魂”を触媒にして【魔力】を増幅してるデス』
何らかの方法で、魂を削るに来るんじゃないかってのは予想していた事の一つではあるが、それをまざまざと見せつけられてしまえば、心穏やかでってのはちょっと厳しくなる。
俺が“非情”で居られるたのは、あくまで最終的には救う事が出来るだろうってぇ希望的観測が有ったからだ。だが、今の状況的には、こちらが反撃をする度に、向こうの寿命を削っているってぇのと変わりがない。
『全く罪のない』とは言えない人々ではあっても、命を掛け金にされる程に罪が有るのか? と問われれば、『それほどではない』と言えるだろう。
「これが、本来の“魔族”って事かよ」
自らの嗜好に合う【オド】を喰らう為に、人々を嵌め、蔑み、貶め、苦しめる。本来なら、こっちの方が元々の魔族の気質なんだろう。
あの【邪神】と対峙した事が有るからこそ分かる。決して“人”とは相容れる事の出来ない、異質で異様な精神性を持った別次元の生き物。そんな物から【加護】を得ているのが【魔族】と言うモノな訳だ。
攻撃をされ、それを回復される度に、その寿命は失われてゆく。
だが、それでも、攻撃をされれば反撃をせざるを得ない。限りなく偽善な自分の思考に、苦笑しか出来んわ。
果たして、彼等は持つのか? そんな事を呟いてはみるが、当然の様に返答する者は居なかった。
******
『【歓喜】完っ成っデェス!!』
「んっ!!」
拳を振り上げ、渾身のドヤ顔で、ジャンヌとイブが『むふぅ』と鼻息を荒くする。二人とも無表情だけど。
イブが【圧縮魔力】からの高圧洗浄を完成させたのは俺が思い悩んでいた、そんな時だった。そしてそれを元に、ジャンヌが【圧縮魔力】の放出を【魔術】として完成させてくれる。
『【渾身】これで、ようやっと本格的に反撃が出来るデェス!!』
「【魔術】として完成したんなら、魔導師団の連中も同じ事が出来る様に成るって認識で良いんだよな?」
『【肯定】イエス! デェス!! 前提として【純魔力】の放出が出来ないといけないのデスが、それは、全員が出来る様になっているデェス!! それも連日の実戦で、熟練度もバッチリデェス!!!!』
一応、これの実験に付き合ってくれた冒険者は、ちゃんと疑似ゾンビから政治犯にジョブチェンジを果たして、今は王城の地下牢の方で寛いで貰っている。
本当は、もう少し臨床実験をしたい所ではあるんだが……
「まぁ、微調整は実戦で、だな」
「ん!!」
「わん!!」
「アオン!!」




