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ラスボス降臨

 偽装ゴーレムは『【説明】使い魔は名前を付ける事で、“縁”が深まりますの』って言うロボセイントの言葉で、オファニムと名付けた。

 座天使の異名の一つで、そもそも座天使が玉座とか車輪とかって意味だった……ハズ。まぁ、戦車を運ぶって役目があったと思ったんで、そんな感じにした訳だ。


 なんかロボウィザードが『【納得】覇権を目指すデスネ』とか言ってたんで即座に否定しといた。

 あと、エリスも「玉座が欲しいなら……ワシと……」とか言ってたが、そっちも「いらん」と返しておいた。

 何でか二人してショックを受けた顔してたが、知ったこっちゃない。


 オファニムは、起動する時にこそ大量のプラーナを必要としたが、浸透させ、名前付けまでした辺りで安定したらしく、今はそれ程プラーナの消費も無く、まるで自分の身体の様に動かせている。

 ただ、俺と接続する為に魔力装甲を延長したせいなのか、それとも同調率が高い為なのか、素材に使った鎧の鉄の色ではなく、俺の魔力装甲と同じ様な深い赤黒色へと変貌していた。スリットと赤光突きで。


 ファティマなんかは、『【理解】サー、サーの外装なのだから当然です。サー!』とかって当たり前ですみたいな顔をしていたが、何でだ?


 そうそう、エリスパパと王弟の話し合いな、既定路線通りに物別れに終わったぞ。

 で、今はお互いが兵を進めるまでの位置取り待ちをしている最中。

 もっとも、その後一番槍をするのは俺で決まってるんだがね。斧を使う上に牽制しかしないのに一番槍とはいかに? って感じだが。


 どうやら配置に付いた様だな。お互いに後10mも進めば矢の射程内と言った所か。


 進軍を告げるラッパが鳴る。


 さて、そんじゃま、お仕事しますか。


「ファティマ!!」

『【了承】サー! イエス!! サー!!!!』


 武器に変形したファティマを掴む。そしてプラーナを彼女に注ぎ込む。

 他の聖武器は、それぞれ持ち手の所へと行っている。ただ、聖剣がエライ渋ったが。一応、現国王なんだがね、あのオッサン。この場に居る誰よりも高い地位だぞ?

 聖武器、それも聖剣に『【拒否】!!』とか言われて涙目になってたがな。聖剣、最後はファティマに言われて不承不承、承諾してたが。


 防壁を蹴り、両軍の間を目指して跳躍する。国王軍は最初から知らされていた事も有って、即座に進行を停止したが、王弟軍は突撃を止める事は出来ない。


 エリスに「思いっきりやってよいのじゃ」って言われてるから、全身全力で行かせてもらう!!


「ファティマアアアアァァァァァァ!!!!!!」

『【了承】サー! いつでもどうぞ!! サー!!!!』


 駆けて来る王弟軍の、その進行方向の地面にファティマを渾身の力で叩き付ける。


 ゴオオオオオウウウゥゥゥゥゥゥンンンンン!!!!!!


 爆音が轟き大地が揺れ、土埃が舞う。それで視界を奪われた王弟軍達が、そのまま突っ込んで行き、次々に悲鳴が響く。

 たっぷり20分近く視界を埋め尽くした土煙が治まった後、両軍が見たのは半径300mは下らない巨大なクレーターだった。

 王弟軍の歩兵は殆どそのクレーターに落ちている、この一撃だけで王弟軍は半壊と言って良い損害を受けたハズだ。

 ってか、オジサンちょっとびっくり。規模デカすぎじゃね? 範囲攻撃無いっすから俺、とか思ってたけど、これで十分だったわ。

 いや、偽装ゴーレム(オファニム)聖武器(ファティマ)の協力まであっての結果だから、今回限りの一発技だったわ。これ。うん、慢心いくない。


 王弟(てき)軍どころか国王(みかた)軍の人間まで唖然としている最中、エリスにつつかれた国王の声が戦場に響く。


「見ての通り、我が軍は一騎当千、いや、万夫不当である!! これ以上、無駄に被害を拡大したくなければすみやかに投降しろ!!」


 ざわつく兵隊と顔を見合わせる隊長格の兵士達。そんな中、王弟が叫ぶ。


「ふざけるな!! 我らはまだ負けた訳じゃない!! 全軍進撃せよ!!」


 状況が見えてないのか、さっきまで楽勝ムードだったから、逆転されるのを認めたくないのか。

 俺はそこから跳躍すると、()()()()()()()、今度は魔術師達と後陣の親衛隊との間にある空きを目指す。

 空を走る俺に唖然としたのか、兵士達の動きは無かった。

 凄いなオファニム。俺のプラーナを強化増幅してるのか? さっきの一撃も桁外れの威力になってたが、今まで一、二歩しか出来なかった空中走行が連続で出来るぞ。


『【肯定】サー、個体名【オファニム】の力もそうですが、サーの力も上がっていると解析します。サー』

「そう、なのか?」


 まぁ良い。エリスパパによく似た顔立ちの男が視界に入る。周囲を華美な騎士が囲んでるし、何やら豪奢な鎧を着こんでるし、アレが王弟で間違いないだろう。

 俺は、誰にも直撃()しない様に、渾身の力でファティマを振り下ろす。


 ゴオオオオオウウウゥゥゥゥゥゥンンンンン!!!!!!


 二回目の地響きと土煙。王弟がペタリと尻をついた。その足元10数cm前までが砂と化し蟻地獄の様に抉れなくなっている。

 俺は、その地獄の底から、見上げる様に王弟を睨み付けた。

 オファニムの無感情な瞳が真っ青な顔で震える王弟の姿を映す。

 さぁ、どうする? 簒奪者。これ以上やるってのなら……


 俺は、大股でクレーターを駆け上がる。親衛隊やら魔術師やらもまだ残ってはいるが、皆、石化でもしてんのか? って思う位に微動だにしない。

 動かないってんなら、都合が良い。

 俺は、そのままへたり込んでる王弟に近付くと、その顔を覗き込んだ。


「……あー、やっぱり、気絶してるな」


 ******


 俺は、気を失ってる王弟を国王の元まで持って行った。

 グニャリと床に横たわる、自身の血を分けた兄弟の姿を見て、エリスパパは何とも言えない表情をしてやがる。


 逃走すら出来ずに戦意を喪失した王弟軍を国王軍の兵士が捕縛し、王都内に引っ張って来ている。戦力10倍って事は捕虜も10倍ってこった。

 大変そうだが、そこはお仕事って事で頑張ってくれ。

 

 まぁ、これでこの内戦も終わりかね? 問題は山積みで、むしろ問題しか残って無い気もするが、この後の事はアンタらの仕事だ。


「さて、この後はどうすっかね? まぁ、とりあえずはイブを迎えに……!!」


 嫌な気配に俺は空を見上げる。ファティマ以外の聖武器達も、ロボ形態になって俺と同じ方向を向いた。

 ファティマだけが、俺の手の中で、むしろ感情を押し殺すように身動ぎ1つしない。


「嘘だろ?」


 空に浮かぶ漆黒のシルエット。それを俺は知っている。知ってはいるんだ。


「邪竜……」

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