ファンタジーではあるけんどもさ
イブの俺への感情が、若干、いや、結構、あー、だいぶ、崇拝に近い感じなのは知ってたんだが、その事で、こんな弊害があるとは思わなんだわ。
やっぱりあれだね、信賞必罰とまでは行かなくとも、活躍した人間が、その活躍を正しく周知されていないと、様々な誤解と揉め事が生まれるやね。
てか、宮廷魔導師でも、『力こそパワー』の国の教えが浸透してやがるんな。いや、宮廷魔導師だからこそ、か?
多分『威力こそパワー』とか『魔力こそパワー』とか、その辺の近似に置き換わってるんじゃなかろうか?
何にせよ、“力”を見せる事が出来れば、認められるってぇお国柄だってんなら、ここでイブの能力を見せるってのは、良い手段だと思うんよ。
実際、イブの能力が不当に低く見られてるなんて、思ってもみなかったからなぁ。ほら、俺自身はイブが“天才”だって事、まざまざと見せつけられて暮らしてるし、ジャンヌも彼女の才能を絶賛してる訳だし。
第一、イブ、特に魔法の才能を隠してる訳じゃないしなぁ。それでもまぁ、直接見た訳でもなけりゃ、高々10才程度の美少女が、大人も裸足で逃げ出す程の【魔法】の実力を持ってるだなんて思わんよな。
「……派手にやってるみたいだなぁ」
魔術訓練場から聞こえる爆音に、思わず苦笑が漏れる。これが、イブが攻撃しての物なのか、それとも魔導師師団長の……ウィキシュさんだったか? の攻撃なのかは分からんが、爆音が鳴り響いているって事であるなら、それはつまり対決が終わってないって事な訳だ。
もしこれがオーバーキルだったとするなら、流石にジャンヌが止めてるだろう。止めてるよな? 止めてると信じよう。
何だかんだでジャンヌ、才能がない輩に辛辣だからなぁ『人に優しくしよう』とかって言っても理解をしてくれんのよね。
『【得意】お!! オーナー来たのデス!! 丁度クライマックスに入る所なのデス!!』
「って、もう!?」
俺が連絡受けてからそんなに経ってないぞ!?
ジャンヌに言われて、訓練場の方を見る。
「え? なにあれ?」
俺の目に映ったのは、巨大な白い狐と蝶の羽を背中に生やしたイブが空中に浮かび、何やら鱗粉の様な物を撒き散らしている所だった。
いや、一足飛びで【インフィニティー・ゼロ】を使ってないだけマシだとは思うが、何が起こってるのかが全く分からん。
ってか、世界観が違い過ぎんかね!?




