風雲急を告げるとです
把握するべき事が多ければ、それを昇華し、自身の中で整理する為の時間が必要になる。
今、まさに、国王君がそんな感じなんで、一旦、休憩を挟む事にした。
現状のおさらいだけでも、色々と考える事はあるからね。
見た所、外の攻撃ってか襲撃は落ち着いて居るっぽく、だいぶ静かに成っている。
幸いと言って良いのか、黒幕魔族が新たな次の手を打って来る様子はない。
まぁ、獣人の王国を恐怖と混乱の渦に叩き込むのが目的だったとしたら、既にその目的は達成されてる訳だしな。
混同したらいけないのだが、『他種族の排斥』ってのはヴォルフガングの目的であって、黒幕魔族の目的じゃあ無いんよね。
ヤツラは、あくまで【オド】を喰らうのが目的であって、そのための手段として、混乱を招くだけだからな。なんで、魔族の目的としては、もう完了してる筈なんだわ。
もっとも、だからと言って黒幕の魔族が、これで手を引くかはまだ分からない。それに、俺の読みが正しかった場合、これだけじゃぁ終わらんと思うのだがね。
疑似ゾンビの厄介な所は、数の多さとタフネスの高さ。それと、リミッターを外されているが故の膂力の強さだ。
自壊を恐れ無いが故に、襲い掛かられれば、慮外の膂力に対処が難しいし、こうやって籠城してたとしても、時間をかければ、城門やら城壁を突破される事だって有るだろう。
考えても見て欲しい。例えばゾンビじゃ無かったとしても、決死で襲って来る敵ってのは厄介だし、普通の戦いでだって、城門を突破される事もある。
なおかつ、こっちは積極的に相手を負傷させられないってぇ縛り付きな訳だ。
俺達が簡単に疑似ゾンビを無力化し、突破して来た様に見えるのは、疑似ゾンビ特効での対処方法を態々習得して来たからって事と、兎に角、城内に入る事を優先したからってのが理由だ。
ありゃ、倒すってより、一時的無力化をして来ただけに過ぎんからなぁ。
もっとも、その一時的にでも無力化する方法を伝授する為に、こうして押して参ってる訳だけど。獣人の王国の数少ない魔術師にも、対策が出来る様に成って貰わんといかんし。
ジャンヌの見込みだと、現状だと再び疑似ゾンビに戻る確率の方が高い。このまま黒幕の魔族がヴォルフガングに手を貸すのを辞めてくれれば、それも無いだろうが、混乱と恐怖が蔓延している今の状態を諦めるとも思えんのよね。
新たなアクションは兎も角、現状を維持するだけでも、大量の【オド】を喰らえるってぇ状態は、魔族の方には願ったり叶ったりな状態な訳だし、維持できるってんなら、しばらくは維持したいだろうし。
いや、このまま手を切ってくれるってんなら、その方が面倒が無いんでその方が良いんだけど、早々、都合よく動いてはくれないだろう。
何と言うか、魔族の方も、俺に嫌がらせする気は満々っぽいし。
『【招待】オーナー!! すぐ魔術訓練場に来て欲しいデス!!』
……ジャンヌからの遠距離【念話】は珍しいな。あ、いや、基本俺に付いて回ってるんだから、必要なかっただけか。
まぁ、それは兎も角。どうしたよ。
『【期待】もうすぐ、魔導師団団長と個体名【イブ】の決闘が始まるのデス!! 面白くなって来たデス!!』
「は?」




