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次行ってみよう

 打ち返された白い火の玉に飲み込まれたガープが、最後に何を言ったのかは聞き取れなかった。

 テンプレで行けば、「そんな馬鹿な」か「こんなはずは」、か。

 色々な魔法を撃ち込んで、抵抗していた様だけど、結局、火の玉を対消滅させるには至らなかったようだ。

 どれだけ俺に恨みを持っていたんだか。逆恨みだがな。

 結局ガープは、自らの恨みに身を焦がして終わった訳だ。


 まぁ、自身の生まれ育った国を内紛させようとしたヤツに同情などしないがな。

 風通しの良くなった王宮から外を見る。王都は結構広いが、王城を中心とした円形に作られている為に、防壁の外まで見渡せた。

 城が川上を占める公都とは、随分形が違う。都市計画1つ取っても色々あるな。


 防壁の外に居るのは王弟軍だろうか? 王城の異変を見て進軍を開始したと言う所だろう。

 と言っても、反応が早い所を見ると、俺らが王都に入り込んだ事を察知した魔族の誰かが、予め進軍を進言していたんだろうが。

 門番>王>ゴモリーラインかな?

 向こうと繋ぎを取っていたのは、ゴモリーかガープか……ゴモリーはねぇな。

 誘惑やら淫堕以外で、そんなマメな事しなさそうだし。


 ******


 ファティマと一緒に屋根伝いに防壁へと向かっていると、眼下では、兵士が住民を城門前広場に誘導している最中だった。

 人々の表情は不安気で……だよな? 流石にリザードマンとか岩にしか見えない人の表情とか、判らねぇわ。

 すごいな。魔人族。これでも元の魔族よりは人間に近しいらしいが……

 あと、獣人だか魔人族だかハッキリとしない住人も多いな。

 これ、間違えたら怒られるのかね?


『【進言】サー』

「あ、悪ぃ」


 今は観察とかしてる時間は無かったんだわ。

 防壁の、最も人の集まっている場所を目指す。


「……ファティマ、済まないがちょっと抱っこしてくれ」

『【歓喜】【羞恥】サー……分かりました、サー。これが私への初搭乗なのですね!! サー』


 あ、うん。そう言や、憧れてるんだったか搭乗型。いや、今更だとは思うが、知っている最小限の人間以外に、普通の赤ん坊っぽく偽装しようと思い立っただけなんだが。


 まぁ、嬉しそうだし良いか。


「あ、後、会話はお前を通してやるからな」

『【了承】サー、当然です、サー!』


 俺は、ファティマに抱きかかえられると、全ての強化を解く。そこに居るのは真っ白な赤ん坊。


 防壁上に集まっているものの中にエリスやゴドウィン侯を見付けたんで、そこに降りる様に指示する。

 周囲の兵士がざわつくが、エリスと……執事、いや、女性型っぽいから家令か? それとシスターに魔術師? 多分ローブ姿で杖持ってるし、が、兵士を説得しているらしい。当然と言うかロボだ。つまりは、アレが他の聖武器か……


 ……()()って何だっけ?


「オヌシ様!!」

「トール卿!!」

「……」

『【宣言】僭越ながら、私がサーの意志を代弁いたします』


 その一言で、エリスとゴドウィン侯は、俺の意図を察してくれた様だ。ってか、イブ達はどうした?

 俺の視線に気が付いたのか、エリスが口を開く。


「兵が集まっている場所では、あの者らは色々な意味で目立つのでな、避難民と一緒に広場の方で待機して貰っておるのじゃ」


 入れ違いになったのか。まぁ、むしろミカ達が向こうに居るなら、不測の事態が起こっても安心できるか。ただ、イブには後で何かフォローを入れとかんとな。


『【確認】王弟派の動きは?』

「うむ、見ての通り、すでに進軍を開始して居る。もう半刻も経たずに攻撃範囲に入るじゃろう」


 見ている限り、盾を構えた歩兵が5人とその後ろに槍を構えた兵士が5人で1ユニットの様だ。それが500ユニット程。その後ろに弓兵が横一列100人で3列。さらに後ろに騎馬に守られた魔術師と思しき集団が50人位。王弟は、その後ろのやけに華美な集団の中かな?


 規模で言えば連隊規模って所か。それに対しこっちは大隊程度。しかも先の王城の混乱で怪我を負って居る者も少なくはない。

 結果だけ見れば、この数にまで減っちまったのはガープの策略としては大失敗な訳だ。闘い合わせる事で血の供物とやらを提供したかったらしいからな。なら、兵力差はなるべく少なくなってなきゃいけない。

 10倍の兵力差なんて、普通に考えれば降伏してくれって言ってる様なもんだ。


 本当に、何でアイツ表に出て来たんだ?

 私怨に駆られて自らの計画をぶち壊しにするとか。いや、その矛盾こそが魔族の魔族たる所以か?

 まぁ、良い。


 むしろ、問題なのは、この状況で王弟軍を止めなきゃならないって話なんだよな。なるべく無傷で。その上、落としどころも作らなきゃならないって。

 もっとも、国王側が降参するってんなら、その辺の事は考えなくて良いんだろうけどさ、そうなると国王は勿論、その王族の命の保障は無くなる。

 現在、国王の直系はエリスだけらしいからな。そうなったら、かっ攫って匿うかね。ま、そんな事エリス自身が納得しないだろうし、許さないだろうがな。

 第一、そうなると、今回国王側だった貴族の領地なんかは没収されて、支援の見返りとして他国に譲渡される可能性だってある。


 だからこそ国王側は勝たなきゃならないし、勝ったとしても、今度は国王側に支援した国に土地を譲渡なんて事に成らない様に、対等に渡り合えるって所も見せなきゃならん。


 条件厳しすぎだろう。


 いや、その辺はエリス達に丸投げで良いか。コイツ等の国の話だし。

 俺が内心溜息を吐いていると、エリスも暗い顔で俯いた。


「正直な話、兵士達の士気は駄々下がりなのじゃ」


 まぁ、守るべき城が崩壊してるんだから、分からんでもない。その上で、追い打ちをかけるかの様な王弟軍の進撃。それも兵力差は10倍。強いての朗報は聖武器が全て目覚め、それが味方になっているって所か。

 だとしても、たった4人の使い手で戦局なんざ変わろう筈も無い。第一、その使い手の半分がお偉いさんだし。最前線に投入とか愚策過ぎるわ。


「そこでじゃ」


 エリスには何か考えがあるらしい。にんまりをした笑みを浮かべ俺を見る。


「トールに単騎で牽制をして貰いたいのじゃ」


 何言ってんの? この娘。

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