天啓を得る
仕事の準備等でバタバタしていて、遅くなりました。
申し訳ない。
魔人族国の第二訓練場を貸し切る形で、イブとジャンヌが【魔力圧縮】の特訓をしているのを眺めながら、若干、手持無沙汰な俺は、ミカとバラキをモフリ倒しながら、今後の予想出来る問題に対しての思考を巡らせていた。因みに聖弓は、息抜きがてら見学してたエリスを執務に戻す為、駄々をこねる女王様を引き摺って執務室へ。南~無~。
今の所、俺の魂の恢復を再現できる人間が他に居ない事も有って、ゾンビ化からの浄化の最終段階を俺自身で行わなくちゃならんって状況なんだが、それって、つまりは、魂の恢復を行ってる間は、俺が戦闘に参加できないって事でもあるんよね。
まぁ、戦闘に関しちゃ現軍務卿以下、獣人の王国の軍部の人達も協力してくれる事に成ってるんで絶対的な戦力が足りてないって事じゃ無いんだが、少なくとも敵方に黒幕の魔族とオンディーヌってぇ魔族の二柱が居るって分かってる以上、そんな余裕ぶっこいてる場合じゃ無いのも確かなんだよなぁ。
何せ、この二柱ってか、オンディーヌ一柱だけでも戦況はひっくり返せるだけの戦闘力を有してる訳だし。
嫌だよね、個人で軍隊相手に圧勝できるスペックが有る相手が敵側に居るって。
『【嘆息】それは向こうも、同じ事考えてると思うデス』
……幸いと言うか何と言うか、ジャンヌをはじめ、個人戦闘力が高い奴らは俺達の陣営にも多いんだが、それらの人員は、そのままゾンビ対策人員でもあるから現状フリーで動けるのってミカ、バラキ、ウリ、ラファ、ラミアー、セフィ位か? 結構いるな。ただ、この内ラミアーとセフィは、仲間ではあるけど多分、俺個人が危険にさらされるか、攻撃に参加している時じゃないと、積極的に手伝ってくれないタイプなんで、実質、動いてくれるのって犬達だけなんよね。
それでも最近の軍部は随分と引き締めが有って、全体的な武力が向上してるらしいんで、それ程心配もいらんのかね?
何でも、意識をひっくり返される様な事が有ったんだとか国王君と宰相さんが言ってたんよね。何か『おかげで』みたいな事も言ってたんだが、何か有ったっけか?
元軍務卿が鍛え直させてくれって事で押しかけて来た位しか、特別、係わる様な事は無かった筈なんだが、それを見てって事かね?
確かに、あの歳から鍛え直そうとかってしてるのを見れば、気は引き締まるかも知れんが。いや、馬面だから、年齢良く分からんが、あのカイゼル髭は、結構、年食ってそうに見えるんだけんども。
『【怪訝】もしかして、飽きて来たデス?』
いや、イブとジャンヌが特訓してるってのは分かるんだが、俺、ここに居る意味なくね? 【プラーナ】の事なら兎も角、【魔力】に関して、俺が意見出来る事なんて何も無いんだし。
それに、疑似魂の調整できる聖弓も居なくなっちまったから、魂の恢復の練習も出来んしさ。
「アン!」
「アオン?」
ジャンヌと【念話】してた所為で、モフリの手が雑に成った事に気が付いたのか、ミカとバラキが非難の声を上げる。
うん。すまん。考え事をしてて、言わば手元だけは無心状態に成ってる時は良いが、誰かと会話なり【念話】なりをしてると、集中して無いのと同じ感じで、モフリの手が緩んじまうっぽいな。精進せねば。
と言うか、実際【魔力圧縮】については俺の助言出来る事なんざ何もないってのも本当の話で、そもそも【魔力】の方は、基本的に【魔法】へと変換して使用するものだがら、圧縮するってぇ必要なんざ、今まで全くなかったらしいんだわ。
そりゃそうだ、例えばエンジンに濃度マシマシの圧縮燃料なんて物ぶち込んだら、一発でオシャカに成っちまうからな。
そんな危険な事、今までやろうなんて考えんだろうし、そもそも、今ある魔法は、一定量の【魔力】供給を前提にデザインされた代物なんだから、圧縮する必要なんて全くなかった訳だし。
ただなぁ、こうやって、眺めているだけの時間ってのも無駄な気がしてなぁ。こう言う所が余裕が無いって所なんだろうとは思うが、どうにも性分なんよね。
『【嘆息】そんなに手持ち無沙汰だと言うなら、犬達に【プラーナ】での恢復でも仕込んだら良いデス! そもそも、【プラーナ圧縮】が出来るなら、きっと恢復も出来るのデス!!』
……なん、だとっ!!
『【動揺】な、なんデス?』
その発想は無かった!! ジャンヌ! おまいは天才か!!
『【呆気】えっデス?』




