敵の厭らしさを再確認
「やっぱり、純粋な【魔力】に干渉する為には、こっちも純粋な【魔力】をぶつけるしか無い様だな」
『【肯定】だけど、あまり効率の良いやり方じゃ無いのデス』
魔力パターンに個人個人の固有の波が有るってのもあって、他人の【付与】した【魔力】を無効化させ、魂から引き剥がすのは、ソコにこびり付いてる【魔力】より、大量の【魔力】をぶつけるしかないって結論に成った。
要は、【魔力】同士の反発を使おうってこったな。うん。俺も、一番最初に【治癒】の為に【魔力】を同調させるのは苦労した。いや、俺のアレは【プラーナ】であって【魔力】じゃぁ無いんだが。
『【嘆息】普通は【プラーナ】を【魔力】に同調させるなんて出来ない筈なんデス』
さよけ……けど、より大量の【魔力】かぁ。
「どんだけ人が必要だと思う?」
『【苦悩】難しい所デス。ただでさえ、獣人は【魔力】を扱うのが上手くないのデス。必要な人数が集まるとはとても思えないデス』
『【嘆息】それに、【付与】された【魔力】以上の【魔力】をぶつけるとなると、普通の魔法使いでは、1人で1体を相手にするのが精々でしょうから……』
だよね。
もしかして、獣人の王国に対してこういう戦法を使って来たのは、対応策が打てないからなのか? うん。普通に考えてそうだな。いや、ホント、厭らしい計画の立て方をしやがるな。
こうなると、魔法を使える人間を外から呼ばなきゃいけない訳だが、それをやるにしても、ちょっと前まで『他種族排斥』とかって輩が主力派だった訳だから、早々簡単に他国から援軍を連れて来るって事も出来ない。
今は、辛うじて出来なくはないって所だけど。主に俺のせいで。
『【苦笑】普通は、そこは“せい”では無く“おかげ”と言う所ですわよ?』
……理解してしまえば、成程どうして、合理的で効率的な計画を立ててやがる。いや、本当に用意周到で厭らしい事考えるもんだわ。計画を立てたヤツの性格の悪さが滲み出てるやね。
「援軍を呼ぶにしたって、取り敢えずは国王君に確認してからだよなぁ。もしかしたら、異種族を国の中に呼び込む事自体を嫌がる貴族とか要るかも知れんし」
俺がそう言うと、ジャンヌと聖弓が、お互いの顔を見合わせた。いや、何よ。
『【嘆息】バックにオーナーが付いてると分かってて、対立しようと言う貴族が居たら、大したもんデス』
「いや、居るだろ。普通に。元軍務卿だって、ドラゴンスレイヤーだと分かってて突っかかって来てる訳だし」
『【苦笑】それはもうダメ押しだったデス。逆らう事自体が烏滸がましいと思える程の戦力差だったデス』
『【嘆息】話には聞いてましたが、個体名【トール】は、少々自己評価が低いように思いますわ』
そうかね? 俺的には、慢心しない様に気を引き締めてるってぇつもりなんだがね。たださぁ、それを差し引いても俺の周囲、“本物”が多いじゃん? バフォメットは言うに及ばず、最も身近なイブさんだって、結構な天才さ加減じゃん?
その中に居て、どうしたら『オレSugeeeeeee!!』とか出来る気で居られるんだ?




