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水面下での戦い

 そもそもの俺の目的ってか、目標とする所は、ゾンビ化した人間を元の状態に戻すって事だ。いや、ゾンビ化って言っても死んだわけじゃ無いんだが。……死んでないよな? 魂が削られてはいるかもだけど。


 なんで、“元に戻しました”“でもお亡くなりになりました”ってぇ状態はなるべく避けたい。ただ正直、全部が全部上手くいくなんて、最初っから思っちゃ居ない。もしお亡くなりになったなら、そんときゃそん時で、どうしようもないとも思う。


 そもそも、獣人の王国国内では、件の薬に関しちゃ、蔓延しない様に国王君やら宰相さんやらが色々頑張ってくれてるんだわ。

 それでもなお、手を出しているとなれば、それはもう、手を出している人間の問題でもあるんよね。実際、すでに、危険性と常用性が有るからって事で、取り締まっている訳なんだし。

 一方的に『この薬は違法だ!!』って、規制を強制するのは簡単だけど、それやると、王家に対する不信が高くなるんで、それでなくても、貴族VS平民みたいな対立の雰囲気が蔓延してる国内情勢においては、火に油を注ぐ事に成りかねんって事も有って、情報操作やら何やらと、いろいろ苦労した後、ようやっと薬の規制にまでこぎつけたらしいんだわ。それでも、使用者に関しては、社会的に問題を起こしてるってぇ訳でも無いんで、あまり重い罪には問う事が出来ないってのがなぁ。うん。ご苦労様って感じだ。


 それでも、国内には結構な数の薬が既にバラ撒かれてたそうだし、闇取引での売買も多いっぽい。とはいっても、路地裏で高額でって言うよりは、街の大衆食堂で、煙草かなんかを『一本くれ』『後でおごれよ?』位の軽いやり取りじみた感じらしいんだが。これも、売買って言うか何と言うかってぇ感じ。

 それでも、一応見つかれば取り締まりの対象にはなるんだが、基本現行犯で見つけるのが厳しいのも確かなんだわ。

 何せ、このことに関しては市民の協力が、ほぼ無いってぇ状態らしいからな。


 だとしても、そんな気軽にやり取り出来るって事は、それ位には薬が市井に広まってるってぇ、証拠でもあるんよな。厄介な事に。


 まぁ、基本的に体の調子が良くなるだけの物だと思ってるだけだろうし、薬が切れたからと言って暴れる者が出る訳でもない。魂が削られてる自覚症状なんて無いだろうし、『御上が勝手に規制してるけど、俺達にとっちゃ、知ったこっちゃねぇ』って事なんだろうな。

 特に、既に国側に対する反骨心みたいな物が、冒険者連中を中心に出来上がりつつ有った事も、それを後押ししてるんだろうさね。

 特に獣人の王国の冒険者ってのは、民衆にとっては身近なヒーローポジションだしな。


 そもそも、多分なんだが、規制されるってぇ事も読んだ上で、先んじて『民衆主体で広まる流行りを自分達の都合で踏みにじる国』的なデマを広めてたってか、空気感を蔓延させてたんじゃないかなぁ。

 そうなると、『やっぱりな』ってぇ感情と『自分達を蔑ろにする国なんて、むしろ許せない』って言う思考の方が強くなるし。


 そんな丁度良さそうなタイミングを狙って薬を広めてたんだろうから。こう言う、暗躍するタイプの周到さは厄介なんだよなぁ。

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