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時間稼ぎをしてみる

 エリスによく似た屈強そうな男が大剣を振り回し、獅子頭のゴドウィン侯が槍を振るっている。そして、そこに確実にフォローを入れる様に矢を撃ち込むのは自身より巨大な弓を構えたエリスだ。

 エリス、お前弓矢使えたんな。

 あ、今はそんな事、気にしてる場合でなく。


「ファティマ!!」

『【了承】サー、イエス、サー!!』


 武器形態に成ったファティマを掴むと、俺はガープに一撃を叩き込んだ。


「よう、ちょっと見ない間に、随分、雰囲気変わったじゃねぇか」

「虫けらああああぁぁぁぁぁ」


 ガードこそしているものの、肩深くまで食い込んだファティマがジリジリと押し返されて行く。

 両断するつもりで切ったんだがな、いや、元のガープなら確実にこの一撃で終わってたはずだ。

 この短時間でパワーアップしたって事か? まぁ俺も人のこたぁ言えねぇんだがな。


 ガープの面影こそあるものの、エリスやエリスパパに近しかった外見は、歪に肥大化していて、体表は何やら焼け爛れた様に黒ずみ硬化している、そして、血走った瞳からは狂気以外感じられなくなっていた。

 この様子だと、コイツの好むオドは狂気、混乱って所か?

 城内の兵士や女官を襲って、随分オドを吸収したっぽいな。周囲には多分城に勤めていたんだろう人達が倒れ伏している。


「ミカ!!」

「アオン!!」


 犬達が散開し、負傷者であろう人達を避難させるために走って行った。盛り上がった傷口に押し返されてたファティマを引き戻し、反撃して来たガープの拳をいなす。


「オヌシ様!!」

「トール卿!!」

「おう、エリス。聖武器から、上手く協力を取り付けられたみたいだな」

「うぬ!」


 と、ガープの右手がボコボコと泡立つように変形し、そこからサーベルの様な物が生え、俺に振るって来た。

 そいつをファティマの柄で受け止める。

 しかし、これは逆に困ったな。味方が近すぎて、全力が振るえない。今の俺は、衝撃波で周囲を薙ぎ払っちまうからな。

 何も考えずに全力でって出来るなら良かったんだが、負傷者に被害が出ないように気を使いながら手加減って、ぶっつけ本番でやるもんじゃなかったわ。

 バフォメットと闘か()ってた時は、ミカ達がイブを守ってくれてたから心置きなくやれたが、複数の負傷者がいる状況だと、流石にミカ達のフォローが追いつかない。

 まして聖武器を持ってはいても、一人は、確実に味方とは言い難いしな。


 そんな事を考えながらも、ガープの攻撃をいなす。サーベルの当たった城の床に大穴が開く。流石に()は、だいぶ上がってる。だが、筋力重視での強化だったのか、スピードの方は若干上がった程度だ。

 それでも、普通なら十分脅威なんだろうが、音速戦闘やってた身からすれば、攻撃をいなす程度なら、対応できるスピードではある。

 隙を見てセーブした力で反撃を試みてはいるのだが、バフォメット程では無いが、回復が早い。


「この!! クソ虫がああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 およ、虫けらからクソ虫にランクアップしたな。流石に白兵距離での攻防は自分の方が分が悪いと感じているのか、焦りが表情に出る。

 物理がだめならってか?

 だが、こんな至近距離で呪文を唱えるのなんざ愚の骨頂だろう。と、唐突に大気の揺れを感じた。


「無詠唱!?」


 しくった!! それもあり得ると考えるべきだった。だが、プライドの高そうなコイツが自爆覚悟の相打ちを狙って来るなんざ考えてもみなかった。

 至近距離からの荒れ狂う暴風の刃。


 …………だったのだが…………


「何いいいいぃぃぃぃぃ!?」


 いくつもの裂傷をを作ったガープと無傷な俺。

 魔力装甲を貫ける程の威力では無かったらしい。なる程、風の刃は、不可視ゆえに防ぎにくい。だが、威力的な事で言えば、他の属性魔法に比べれば低い傾向にあるからな。そのせいだろう。逆転を狙った一撃で、コイツにとっても切り札だったんだろうがな。不発の様だぞ? ザマァ。


「オヌシ様!!」

「おお!! トール卿!!」

「……!?」


 若干状況を飲み込めていない様だが、エリスとゴドウィン侯は、俺が至近距離で魔法を受けても無事だった事に安堵してくれたらしい。

 だが、困ったな、このままだと、お互いに決め手を欠いた状態での千日手になってしまう。

 城がボロボロで、おそらく火の手も上がっている。こんな状況じゃぁ、まるで襲ってくれと言ってる様なもんだ。

 つまり、王弟軍がいつ襲って来るか分からないってこった。


 ふと、救助をしているミカ達の様子が目の端に映る。ああ、そうか、全力が振るえないってんなら、振るえる様な状況にすれば良いのか。


「エリス!! お前たちは避難と対応をを優先してくれ!! 王弟軍がいつ仕掛けてくるかも分からない!! 俺はこれから()()()()()!!!!」


 俺の言葉にエリスがビクリと肩をはねさせる。だが、今のガープ相手では自分達が力不足だと言う事、そして今が絶好の襲撃タイミングだと分かって居るのか、ゴドウィン侯と、多分エリスパパに、「避難を優先するのじゃ」と声を掛ける。

 エリスに言われ、二人ともが躊躇している様だったが、次の「ワシ等では足手まといにしかならないのじゃ!!」と言う言葉で、渋々と言った感じでエリスの後を追って行った。


「さて、ファティマ、避難と態勢を整える時間を稼ぐぞ? って言っても、どれだけ稼げば良いんだ?」

『【報告】サー、先程の者達が所持していた“姉妹”に通信を要請しておきました。これで、避難諸々が完了すれば連絡が入ります。サー』


 ああ、他の聖武器も意思を持(インテリジェ)つ武器(ントウェポン)なのか。てか、全員女性系? まぁい良い。


「流石はファティマだ優秀で助かるわ」

『【歓喜】サー、それ程でもありません、サー!』


 さてガープ、しばらくの間、時間稼ぎに付き合って貰うぞ? 答えは聞かないがな!!

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