好事魔多し
コース料理、美味しゅうございました。一通り堪能した後、皆でデザート。
いや、俺はコースだけで充分だったんだが、何でかラミアーとセフィが『何か血を使ったやつ』とか『なまやさいぃ』とかって無茶振りしやがったがよ。そもそも、おまいら本来食事必要ない面子やんけ。
それでも叶えてくれるシェフ、マジイケメン。お礼と謝罪分も料金に上乗せしとこう。うん。
さてさて、出されたデザートは、紅茶のシフォンケーキ、生クリーム添え。この世界には珍しく果物の砂糖漬けじゃぁないのは、恐らく家から提供したレシピを使ってるからだろう。
まぁ、何を隠そう、ここのお店を紹介してくれたのは、ゴトウィン侯なんだけど……あ、いや、当主は引退したんだったか。今はエリスのお世話三昧で楽しそうにしているゴトウィン老な訳んだが、彼はまぁ、家の食事事情とかも分かってるし、俺と同じく甘ったるいだけのお菓子類はあまり好みじゃ無かったらしく、甘さ控えめのデザートは気に入ってくれてたっぽいのよね。
なんで、色々とお世話にも成ってるんで、そのお礼として、キャルの再現したお菓子のレシピをいくつか渡してたんだわ。
まぁ、内戦で疲弊していた国庫を潤す為に、何がしかの対策も必要だったって事も有ったんで、魔人族国では生産量の多い、小麦の需要拡大も狙っての事なんだがね。
『結構な好評さ加減ですのじゃ!』ってのはゴドウィン老の弁。好評だってのならレシピ渡した甲斐が有ったわ。
むしろ、聖弓とか聖剣が、何で気が付かなかったんじゃろか? って話なんだが。
『【鼻笑】料理が壊滅的なあの二人が、そんなこと思いつく訳ないデス』
さよけ。
ここの店のオーナーが俺達に好意的だったのは、ゴドウィン老が、その辺の話をしてくれてたんかね?
まぁ、それは兎も角、こういうお店を知ってるって事は、もちろん、そう言った相談事なんかもしてたって事だよな?
やっぱり、大貴族ともなると、綺麗事だけじゃやっていけんのだろうさね。人の事ぁ言えんけど。
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「何かしら?」
デザートも食べ終わって、お茶を飲みながらまったりしてる所、何やら個室の外が騒がしい。第二夫人も気が付いたようで、首を傾げた。
ここのお店、内々での相談事なんかをする兼ね合いで、防音もしっかりしているから、他の個室で何か騒ぎが有ったってぇ事じゃぁ無いだろう。
だとすると廊下で、それも、俺達の居る個室の近くでってぇ事に成る。
「ドルヴィ様!! 困ります!!」
「煩い!! この儂の断りもなく、何故、あの部屋が借りられて居る!!」
「そうは申されましても!!」
……何か、さっきより声がハッキリしてきてね?
俺がそんな事を思った次の瞬間、個室の扉が乱暴に開き、いかにもって感じの傲慢そうな貴族風の中年がどかどかと部屋に入ってきた。
その後ろには、困ったと言った様子のマネージャーの姿。
あーこれ、面倒事だよね?




