そうだ、王都に出よう
妄信者の狂気と言う物を味わった光教会から戻って、早速、メインの目的でもある、疑似魂での魂浄化実験を行おうと思ったんだが、まぁ、それにも準備時間が必要だって事で、少しばかり時間が空いた。
いや、準備って言っても、聖弓の時間を作るとかってのも有るんだが。主に書類仕事から逃げがちのエリスを捕まえたり、代理で書類整理をしたりと言った事で、取り敢えず、真面目に仕事しろや女王と言いたい。
俺だって、主だった書類仕事は前倒して終わらせてからここに来てるねんで、と。
そんな訳で、今俺は、第二夫人と魔人族国での王都デートにしゃれ込んでる訳だ。まぁ、色々と塞ぎがちな第二夫人の気分転換もかねてかなぁ。
当然だけど、犬達やイブ、ジャンヌにティネッツエちゃんとジョアンナさん、ついでに魔物’Sも一緒だけれどね。
今回はキャンピングカーは使わずに魔人族国の王城で借りた普通の馬車を使わせて貰った。
「やっぱり、トールちゃんの作った馬車の方が楽よねぇ」
「俺が造ったって訳じゃないですけど、まぁ、向こうは色々と最新技術を取り入れてますから」
と言っても、基本的なダンパーやら板バネやらゴムタイヤ何かの基礎概念をマトスン達に伝えただけだけどな。
馬車自体の基本設計と魔改造は、ドワーフ’S withマトスンの仕事だし。
何で、態々、持って来た馬車を使わないかと言えば、紋章が付いてるんだよ馬車には、俺の。この国に来た時の歓迎っぷりからも分かるとは思うけど、大人気らしいよ? ドラゴンスレイヤーさん。
その為に、王城から無印の馬車を借りたんよ。別に注目を浴びるって事がイヤって訳じゃあないけれど、流石に、騒ぎが大きく成り過ぎるのは本意ではない。それに、騒ぎに成れば、気分転換どころじゃなくなるからな。
女性陣の買い物がメインではあるけど、王国での夜会なんかのお仕事だったり、公爵家の嫡男の醜聞何かで疲れ切ってるであろう第二夫人を労いたいってのはある。
基本的に、繊細で優しい人なんだよなぁ第二夫人。自分だって色々参ってる筈なのに、忙しくしてる俺を心配して魔人族国にまで付いて来る位には。
そもそも隣国のお姫様だった第二夫人は政略結婚で、この国の公爵家に嫁いで来た訳だ。
まぁ、結婚当初こそ、蔑ろだったり冷遇こそされては居ないものの、公爵本人からは義務以上の係わりは持たれなかったらしいし、公爵家の家の中の事は第一夫人に権限が有ったから、公爵家の中では特に仕事らしい仕事もなく、結構肩身の狭い思いはしてたみたいなんよね。
それでも貴族の務めとして夫婦としての生活はあったっぽいんよなぁ。まぁ、そのおかげで俺なんかが生まれて来れてる訳だし、その辺は感謝しといた方が良いのかね? あんまり気乗りはせんが。
当然だが、第二夫人には感謝と愛情しかない。が、公爵の方にはね、どうもさぁ。生まれて即捨てられてる訳だし。
そうそう、俺が捨てられた理由は、やっぱり双子だからって事で合ってたらしい。家を二つに割る事に成るから不吉なんだそうだ。ただ、俺の方を捨てたのは占い師の助言があったからだしな。忘れちゃいないぞ、と。
この世界ね、占い師って職業、一応学術的な理論を伴った物らしいんよね。占星術だったり、秘数学だったりって言うね、そう言った物の総合的な学問らしいんだわ。
まぁ、神様が実在する世界なんだし、【数】って物に力が有っても不思議じゃ無いんだろうがね、だからとしても、占いで捨てられた方にとっちゃ堪ったもんじゃ無いんだぞ、と。
もっとも、結果としては、俺の方は捨てられて正解だったんだがね。あのまま公爵家の嫡男として育てられてたら、ここまで自由に過ごせてはいないとか思うし。
そのあおりを食ったジャンバルディー君には、多少の同情も……ないな。あっちはあっちで、甘やかされて生きて来たみたいだし、それ相応の贅沢は享受してきただろうしな。だから、今の現状は、結局本人の選択の結果だと思うんだ。
もっとも、身体的にも知識的にも実質的な自由が無かった事に関してはご愁傷様としか言いようが無いがね。本当に第一夫人は、将来の公爵家をどうしたいんだか。




