神子にして使徒
「“白の神子様”に於きましては、この度は我が国の教会へご足労いただき、大変光栄に存じます」
……光教会の司祭さんに連れられて、大聖堂内の何か荘厳そうな扉の部屋に。
中に入ると、何か威厳たっぷりの法衣っての? アレに身を包んだ穏やかそうなお爺ちゃんが、とても敬意を払った態度で俺に頭を下げて来る。ええっと?
『【耳打】多分、司教だと思うデス』
御免、教会内部の階級的な事には疎いんだが、お偉いさん?
『【肯定】神の教えを説く人デス。因みに案内をしてくれた司祭は、司教のサポート役になるデス。さらにその司祭を手伝うのが助祭になるデス。ただ、司教と言っても、その中で色々と別れて……』
いや、偉い人だってのが分れば良いんで、ええっと? つまり、司教、司祭、助祭の順に偉い訳ね。因みに、司教さんより偉い人っているの?
『【不満】……大司教と、その上に教皇が居るデス』
あ、はい。ちょっと機嫌を損ねっちまったか。こう言うの説明するのが好きなんな。まぁ、そう言う所はファティマよりもオタク気質だよなジャンヌ。
そう言えば、ファティマは、まだ戻ってこないのな。バージョンアップって、どんだけの事をしてくるつもりなんだか。
俺が【エクステンド】を使って保護しなくても良い程に強化して来るって言ってたが。
まぁ、それはさて置き、熱烈歓迎だねぇ。別に構わんけど。
「トール・オーサキ名誉伯爵です。歓迎、痛み入るが、私は、別に神子と言う訳では……」
「分かっております、分かっております。今そうやって“色”を隠しておられるのも、何がしかの“理由”あっての事なのでしょう。ワタクシ共には理解の及ばぬ、重大なる『使命』を帯びておられる事、理解しておりますとも」
うん、全く理解してくれてない事は理解した。そして、俺が白子だって分かってるって事だけは解った。
「あの時、女王を護り、黒球へと自ら飛び込んだ時の神々しさは、正に神の使徒とも言うべき、御お姿でございました」
神子の上に使徒ですかいな。そんな神々しい使徒さん、生まれて即捨てられてますからね。あれか? 神の試練ってヤツか? あれ? その直後に、打ち捨てられた教会を見つけたのも神のご意思って事に成るのか? 一寸出来過ぎてて、洒落に成らなくなって来たな。
ただ、俺はその神の御心とやらは全く分からんのだがね。神の声とか聞いた事も無いし。
そもそもアルビノ自体は、稀に生まれる事のある遺伝子疾患でしか無い筈なんだ。ただ、酷く珍しい個体な事は確かなんで、神聖化される事はままある。
神の御使いだとかな。多分今回も、そう言った理由で、使徒扱いなんだろうな。
ただ、アルビノ=神の使徒=神の使命を託されているは、早計だと思うんよ。そもそも、俺がそう言った事とかに疎いし、使命そのものも貰った覚えが無い。
「さらに聞いた所によれば、“扉”の先で、邪教徒を壊滅させたと聞き及んでおりますし、先も、【邪神】の復活を阻止したと聞いて居ります」
「……かん口令が出てると思ったが」
【邪神】の復活阻止って、事が事だけに、関係者には口止めをしてある筈なんだ。
「……神は全てを知っておいでです」
話すつもりは無いって事ね。OK、分かった口止めなんざした所で、プロ意識の弱い輩だったら、ポロっと口に出す事も有るだろう。特に懺悔室とかが有るなら、そこで。
建前はどうであれ、人ってのは『秘密』って物に色々な意味で弱いんよ。だから、誰かに話したくなるし、実際に話してしまう。
特に、話す事が出来ないって成ると尚更。
つまり、そうやって口にした事から情報を得ているって事なんだろうな。
怖い怖い。




