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はた迷惑な種族

「グッアッ……」


 腹に大穴開けつつ、たたらを踏むバフォメット。だが、その大穴も、少しづつ塞がりつつある。

 いや、これでも致命傷に届かねぇって、どんだけだよ。


「グッ、油断? 吾輩が油断したのか? いや、違うな……ククク、クカカカカ、グワッハッハッハッハッ!!」


 腹に大穴開けられて大笑いとか、腹膜大丈夫なんか? じゃなくて、この状況で大笑いとか色々ヤバイだろ。魔族。『我々は皆どこかおかしい』とかって慣用句がイタリアにあったけどさ、コイツに関しては、かーなーりー、おかしいわ。

 実はドMだったって告白されても納得するレベルで。


「ライバル、トールよ」

「あん?」


 その枕詞(ライバル)って必要なんか?


「さっきの一撃、狙ってやったと言う事で良いのか?」

「当たり前だ。狙わんで出来るかあんな事」

「成程、成程、成程」


 頷いて、何故か天を見上げるバフォメット。何を考えてやがる?

 あまりに無防備な状態に、俺は逆に罠を警戒する。同時にここからの攻撃もあり得るので、構えをとくことはしない。そんな俺の様子を見て、ファティマもモップを構え直した。

 うん、俺を信じてたんだろうとは思うが、残心はしとけ?

 実際、まだ戦いは終わってないし。


 と、天を見上げたままだったバフォメットが、突然、滂沱の涙を流し始めた。

 って、え? 何だ突然!!


「吾輩、感っ動っしている! ライバル、トオォォォォルの成っ長~にっ!!」


 え? 何突然。てか、何目線? いや違うか、むしろコイツ、最初っからこんなんだったわ。


「短っっ期間でっ、吾っ輩らと肩を並べられるま~でに成っ長~しっ! その上で吾っ輩の予測を超おおぉぉぉぉえてみせたっ!!」

『【確認】サー、この魔族、オカシイです、サー』

「あ、うん」


 ファティマもオカシイと思うか。俺もそう思う。つうか、何か俺の事、自分の同格扱いしてなかったか? コイツ。正直迷惑なんだが?


「あら、もうやめちゃったの? なら、この後はゴモリーと愛し合いましょう?」

「むーーーーー!!!!」


 ふざけた事をぬかすゴモリーに、イブが【ファイアボール】を連発する。うん? ゴモリーの姿が美女寄りになってやがるな? 何でだ?


「ゴモリーは性愛やそれに対する嫌悪。それに嫉妬等の生命磁気(オド)を喰らうからな」


 至近距離から聞こえたイケボに思わずビクリとする。

 いつの間にか俺の脇にいたバフォメット。ファティマが慌てた様にモップを突き入れるが、バフォメットはソレをヒラリとかわす。

 えっと? つまり、ゴモリーはイブが嫉妬し易い様にあの姿になったって事か?


「流っ石は、ライバル、トオォォルッ!! 愛されているのだなっ!!」


 何でそんな意見になった?


「てか、オド?」


 これも聞いた感じの言葉だな? ドイツの科学者が提唱した、惑星や水晶、その他、全ての生き物から発せられているエネルギー……だったか?


「そうだ、我が友(ライバル)、トールよ、吾輩たちはオドを喰らって生きている」


 なんかライバルに不審なニュアンスが含まれてた様な気がしたが? まぁ良いか。ってか()()()()()()

 つまり魔族は生物からオドエネルギーを直接“奪ってる”って事か?


 そう考え、俺が眉を顰めると、バフォメットはまるで『正解』だとでも言う様にニタリ、と嗤った。


「【邪神の加護】によって、吾輩等は、半ばマテリアルボディーを脱しているのでな。肉を喰らったりはしないが、オドは喰らうぞ? もちろん、普段は加減して居るがな」


 要は、エネルギーを直接摂取する体になってるって事か。それが【邪神の加護】? 間違っているかもしれんが物質化した幽霊みたいな物か? 魔族(こいつら)は。

 そして、相手から奪う事の出来る量は加減ができるって事か。

 たぶん、オドも、プラーナを触媒にして引き出せるエネルギーの一種って事なんだろう。

 ならば、人を構成するエネルギーの一部って事であり、おそらく、魔力とかと同じ様な性質を持って居るって事で……


「それは、奪い過ぎれば死ぬって事か?」

「当たり前であろう? ライバル、トールよ。むしろ、殺さずにも食事のできる吾輩等と違って、()()()()()しか食す事の出来ない人間の方が、より野蛮ではないのか?」


 確かにそれはその通りなんだろう。だが、魔族の殆どは、摂取に関し、我慢なんてしていないだろう事は予想に難くない。

 何せ、【邪神の加護】そのものが、何かを生贄にする事で得られる物らしいからな。まぁ、グラスの話では……だ。

 どうも、話を聞いた限り、一口に邪神とは言っても、むしろ邪神群と言った方が良い位、千差万別の神がいるらしい。まるで八百万の神か零落された神々……悪魔みたいな感じだな。

 もっとも、この世界には別に悪魔はいるらしいが。


 信仰する邪神によって得られる力も姿も違うらしいが、共通項として、『異様な雰囲気を纏う』『破滅や破壊を好む』『通常の攻撃では傷を付けられない』と言うものが有るらしい。


 異様な雰囲気は【恐怖】の事だろうし、破滅や破壊を好むのは、好む『オド』を得る為だろうか? そして通常の攻撃で傷がつけられないのはコイツ等みたいに半霊体みたいになってる所為か?

 つまりは、これらが【邪神の加護】って事なんだろう。

 バフォメットによれば人の上位存在になるって事らしいがな。


 本当に人間辞めてるとは。だが、その信仰を辞めると、【加護】とやらは失われ、また人間には戻れるらしいんだが……「人間辞めますか? 邪神信仰止めますか?」って事だな。

 ただし、変異した部分は元に戻る事は無いっぽいがな。


「……お前の喰らうのは、闘争心、破壊ってとこか?」

「それと向上心だな」


 ……不本意だが、成程、俺はバフォメット(コイツ)の嗜好に合致するわけか。

 決して戦闘狂(バトルジャンキー)って訳じゃないが、自分が負けず嫌いだって自覚はある。


「……俺とお前は、肩並べて会話するような仲じゃなかったと思うが?」


 間でファティマが警戒してるがな。


「つ、れ、な、い、ぞ! 吾輩の心友(ライバル)、トールよ! 吾輩にとっても、お互いに高め合える相手は貴っ重~なのだよっ!!」


 うおっ!! 鳥肌が立った!! 成程、『好むオド=本人の性質』って事なら、こいつの性格がこうなのも、分からなくは……いや、やっぱり分からんな。うん。


「大方、お前に突き合わされた殆どは、途中で潰れたってぇ所だろ?」


 俺の言葉にバフォメットがニヤリと嗤う。

 やっぱり、碌なもんじゃねぇな。

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