そろそろ行こうか
23/09/05
本文を加筆修正しました。
この事での、本編の話の流れに影響は有りません。
俺達を連れて来た覆面男達と、同じ様な格好の覆面達が引っ張ってきたのは、ボロボロの貫頭衣を着て、手足に枷を付けられた子供達。円形闘技場の、選手入場口にあたる場所であろう所から、半ば引き摺られる様にして歩いてきた。
その様子に俺は顔を顰める。
成程、この円形闘技場に染み付いてた臭いは、この子等のものだったってぇ事だな。どれだけの時間、ここで虐げられてきたのか、誰も彼も生きるってぇ気力を失った瞳で俯いているわ。
どうやら、最低限生きていられるってぇ程度の食料しか与えられていなかったんだろう。見るからにやせ細り、その四肢もまるで骨と皮だけしかない様に見えるな。
不味いな、このままだと、いざ脱出するってぇ時が来ても、自主的に動こうとはしてくれんかもしれん。恐らく、グラスが突入の為の人員は揃えてくれているだろうけど、多分俺の仲間達は、最速で、ここまで来るだろう。
そうなると、冒険者達が、ミカ達はおろかイブ達にさえ付いて来られるってぇヴィジョンが浮かばねぇ。
つまりは、最低でも仲間達が来るまでは、俺1人で、この子等を守り、仲間が来たとしても、冒険者達が追い付くまでは、子供達を動かす事が出来ないってぇこった。
引き摺られてきた子達が、円形闘技場の中央に集められて行く。
「さぁ!! お前たちも行くんだ!!」
俺達を連れて来た覆面達が、引っ立てる様に、俺達を繋いでいるロープを引っ張る。だが、疲労困憊で座り込まされた彼らの動きは遅い。その事に苛立ったのか、男が強引にロープを引っ張り、先頭に居た貴族の少年がよろよろと立ち上がると、それに続くかの様に、その後ろの少年達も立ち上がった。
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「さぁ!! “贄”は揃った!! 過ちの世界は滅び、“真の”安息の世界が訪れるのだ!!!!」
俺達を円形闘技場の中央に集め終わた後、覆面の1人が声を上げる。どうでも良いが、全員が同じ格好をしてるんで、誰がリーダーか分かりにくいな。
そもそも、自分達が正しい行いをしてるとかって言うんなら、先ず、その覆面取ってからにしろや。
第一に“間違った世界”だとかって事だが、じゃぁ、“正しい世界”ってどんなもんなんよ。ってぇ話なんだわ。
曰く、この世界は、自らを正義だと詐称する、傲慢なる神々によって支配され、その神々の配下以外は迫害される不平等な世界なんだそうな。
故に、その世界を破壊しなければ、真なる自由と平等な世界は得られないんだと。
そして、その世界実現の為には、コイツ等の信望する“真なる神”の力が必要なんだとかこうだとか。
大層な御託を並べ立てて、自由だの平等だの耳触りの良い事を言っては居ても、具体的な世界のビジョンが全く分からないんじゃが?
てか、結局おまいらも神頼みなんじゃねぇか!! あれだな『良い神様は自分を助けてくれる神様だけです』ってヤツだな。
ただ、“贄”だとか言う響きから、これから起こるであろう事には当りが付いている。
イブ達は……まだかかるか。
俺が考えてる通りの意味だとするなら、これ以上は待ってるのは悪手だ。だが、まぁ、良い。
たっぷりゆっくり、時間稼ぎ、やらせていただきます!




