地下円形闘技場へ
湾曲した長い通路を抜けると、そこは円形闘技場を思わせる広い場所だった。いや、思わせるって言うだけじゃぁなく、もしかしたら、古代、そう言う目的で使われてたのかもしれんな。
そして、そこに到着した俺は、思わず顔を顰める。
獣臭と言うか、黴と埃と、垢と汗の混じった様な異臭。そんなものが、そこかしこに立ち込め、まるで目に見えるかの様な瘴気じみたモノが漂っていたからだ。
先頭に居た覆面男が、俺達を繋いでいる縄をグイッと引っ張り、その所為で既にフラフラだった子供達が膝から崩れ落ちる様に地面に座り込む。
俺も、それに逆らわない様に腰を下ろした。
「さあ! 神聖なる祭壇にようこそ!!」
覆面男の1人が、そう高らかに宣言をする。いや、子供達、疲れ切っててそれどころじゃないから、聞こえてないぞ? 多分。
ただ、その宣言で、他の覆面男達からの厭らしい気配が膨れ上がる。覆面の男達の表情は隠されて居て分かりはしないが、それでも嗜虐的な雰囲気は嫌って程伝わって来たわ。
恐らくはここがアジトだろう。グラスからは『お前の好きにして良い』ってお墨付きは貰ってるが、攫われた子供達50名ほどが居るって事を考えると、俺1人だと流石に手が足りんわな。
あー、テステス。【念話】届いてる? ジャンヌ。何か地下闘技場みたいな所に連れて来られたんだけど、来られる?
『【了解】分っかりましたデェス!! 場所は……サイレンが追えるみたいデェス!!』
分かっていたが、凄いなサイレンの追跡能力。獣人の王国の国王君に許可取って借りて来て正解だったわ。良し、これで何とでもなるな。だが、一応、子供達の現在地は確認せんと。
俺は、何か高らかに自分達の正当性みたいな事叫んでる覆面の言葉を聞き流しながら、円形闘技場全体の気配を探る。
……うわぁ、この闘技場全体で結構な人数が居やがる。その中で比較的生命力が高いのがコイツ等の仲間か? これ、全体で100人は超えてるだろう。
そうすると、こっちの生命力の低下してる方が攫われてた子供達か?
正直、もしかしたら亡くなってる子供とかも居るのかもしれないし、どれ程辛い目にあっていたのかも想像する事しか出来ない。それでも、これだけの子供達が、まだ命を繋いで居てくれた事に、少しだけ安堵した。
命さえあれば、後は、どうにでもなる。ただ、やはり、相手の人数が多い。俺は万能って訳じゃない。何でもったった一人で出来るとか思っちゃいない。
ましてや今回みたいに、保護対象も敵も多いって場合は、絶対に俺1人だけじゃ、手が足りないってのは分かり切ってる。
だがまぁ、辛い状況からは、少しでも早く解放した方が良いだろう。
幸いと言って良いのか、ここに居る奴らは、どうやら今まで攫った子供達を闘技場の舞台に集めようとしている様だしな。なら、全員がこの場所に集まるまで待っていた方が良いだろうさね。
ただ、何故、今のタイミングで集めている? 今までもそうだったのか? それとも今回が特別なのか? 何にせよ情報が足らん。しかしまぁ、全員が集まってくれた方が、俺としても都合が良いのは確かだからな。だから、もう少しだけ我慢してくれ。絶対に、全員助け出す!!




