【封印】するのも仕方がない
「最近、お見限りだったのじゃ」
「何でおまいが居るのかと問い詰めたい」
小料理店の女将か! どんな言い回しだよ!! てか、俺は隣国の女王を呼んだつもりは無いんじゃが!?
『【謝罪】そこは、申し訳ありません。わたくしが、個体名【エリステラレイネ】の護衛を兼ねている以上、どうしても、この様な形になってしまうのです』
「いや、必要だから聖弓を呼んだのはこっちなんだから、国の都合上仕方が無いってのなら、謝罪は良いよ。でもまぁ、その謝罪は謹んで受けるわ」
色々と面倒臭ぇが、謝罪されて受けて置かんと、“許さない”ってぇ事に成っちまうしな。特に貴族は。
むしろ、当のエリスが、聖弓ぶっちぎって、家の領に来る事がままある方が問題なんだわ。今回は、正式に聖弓を招待した事もあって、御一行様は普通に許可を取って来ている訳だが。
「ちゃんと国境の砦を使っただけ、マシだと思っておこう」
『【嘆息】隣国の領主にそう思われる女王と言うのが、そもそもどうかと思うのですが……』
それに関しちゃ、激しく同意だけんどもよ。
まぁ、エリスはさて置き、ロボセイントを今回招いたのは、バスト対策の為だ。あん畜生、能力押さえる気が無いってか、垂れ流しにしやがってる割には閉じこもってるのが嫌らしく、しょっちゅう隔離施設から出てこようとしやがる。
ぶっちゃけ、完全に閉じ込めておいた方が良いって気もするんだが、特に悪い事を企んでる訳でもなく、被害としちゃ、貧血で倒れるメイドや兵士が多くなったってぇ程度。いや、それでも充分問題なんだが、ただ、本人にいくら言っても、ある意味、体質みたいなものな訳で、それを理由に監禁ってのも心情的には心苦しい。
そもそも、ちらっとでもバスト相手に敵対心とか警戒心とか持ってなければ、影響ないっぽいんだよね。大人の家人より年少の子等の方が被害が少ないのが、それを証明してる気がする。あとマトスンとヴィヴィアンも。あいつ等興味のある対象以外、割とどうでも良いらしいし。
もしかすると、第二夫人が影響を受けなかったのも、バストに対して、含む所が何も無かったのが理由かもしれんな。
それはそれとして、その第二夫人にバストが気に入られたってのも、監禁するわけにはいかない理由の一つな訳だ。お茶会するとかって約束もしちまってる様だし。
あの後、ジャンヌに相談した所『【名案】ボクに良い考えが有るデス』とか言って、ロボセイントに頼む事を提案された訳だ。
まぁ、あの名言、人事に関しちゃ優秀だった訳だしなぁ。
で、その内容なんだけど……
「何ニャ? とうとうダーリンがウチの愛に答えてくれる気になったのかニャ?」
「寝言は寝て言え」
いや、そう言えば、寝言だって深層意識の顕現ではあるんだから、別に妄想垂れ流しってのは同じって事に成るのか。
では、なく。思考が逸れまくったな。
要は無意識でも能力を発動しちまってるってのが問題なだけで、その能力を抑え込めれば問題は無いって事に成る訳だな。
隔離区画でバストの能力を抑え込める事からも分かる通り、それ自体は出来ない訳じゃぁ無い。ただ、【精霊】クラスの能力を抑え込むとなりゃ、それ相応の施設が必要に成るか、相応の能力が必要に成るってぇだけで。
つまり、ジャンヌの提案とは、相応の力のあるロボセイントに、バストの能力を【結界】で抑え込んで貰おうって事な訳だな。
「って、事で、その制御不能な能力をロボセイントさんにどうにかして貰います」
「うっ、それって拒否は出来ないのかニャ?」
「どうにかして貰います」
「うう……分かったニャ」
『【開始】では、始めさせていただきますね?』
そう言うと、ロボセイントが腕輪を取り出し、バストに着ける。
「ぬぅ、結婚腕輪かニャ?」
「寝言は寝て言え」
『【説明】この腕輪には、【制御結界】が組み込んであります。後は、個人に合わせてカスタマイズすれば使用できるようになります』
そう言って、ロボセイントがバストに色々と聞きながら、腕輪から空中に投影されたディスプレイを操作して行く。
ああ、本人に『【結界】イイイ~~~!!』とかって、何か魔法を掛けるって訳じゃ無いんな。
何か、PCとかのユーザー登録を思い出す光景だわ。
まぁ、腕輪付けて調整するだけっぽかったんで、それ自体は問題も特筆する事もなく、無事終了した。
『【完了】これで良い筈です』
「おう、ありがとう」
問題なく終わり、ホッとする。ただ、元々、バストの能力は違和感なくこっちに掛かってくるから、あまり何がどうこう成ったってぇ感じはしないのな。
そんな感想を覚えながら周囲を見回す。
「って、エリス!?」
やけに静かだとか思ったら、昏倒してやがる!! って、そうか、バストの能力にやられてたか!! でも、エリスも【恐怖】を抑え込める程度には精神力は多い筈だぞ!?
『【当然】恋のライバルとしては強い敵愾心を覚えずにはいられませんでしたか……』
「あ、本人の敵愾心やらに応じてその反応も大きく成るんだったか……」
『【肯定】はい、その様な仕様でした』
いや、おまい、エリスの護衛だよな? 分かってたならどうにかしときなさいよ。




