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ムードブレイカー

「うん、良いわねアナタ」

「あ?」


 俺の頬を包み込む様に両手を当てて、そう言うゴモリー。うん? 手? 見ると、背中の美女と半ば融合した様な状態に、ゴモリーは成っていた。

 顔自体も駱駝そのままではなく、人と駱駝、どちらもまばらにつなぎ合わせた様な、そんな感じに。

 ヒーロー特撮の怪人体とでも言うのだろうか? 人と駱駝の中間と言うには、無秩序に混ぜ合わされ、辛うじて人の形だけ保っている様な、そんな状態だ。


 言うなれば怪人駱駝女って所か。


 そんなゴモリーの指が俺の顎先を撫でる。背中がぞわっとする。

 俺は、とっさにゴモリーから距離を取った。


「その、強靭な意思。堕としたくなっちゃう」


 欲情にまみれた淫猥な視線。さっきも、国王が即堕ちでつまらなかったとか言ってたか。うん、ゴモリー(こいつ)はこいつで要注意人物だわ。

 どうも魔族は、自身の欲望に忠実らしいな。コイツは他者の苦悩を見る事や、強者を精神的性的に屈服させる事に悦びを覚えるってタイプか。サディストサディスト。


「まさか、精神力だけで邪神様から加護を得たゴモリー達に匹敵できるなんて、ゾクゾクしちゃうわ」


 さいですか。俺は、アンタのやけに劣情を感じさせる声にゾワゾワしてる所だよ。生理的嫌悪って奴か? 見た目特撮怪人なのに、艶やかと言うか、色っぽいって言うか。

 転生前なら結構好物な雰囲気だった筈なんだがな。嗜好が変わったかね? まぁどの道今の俺幼児だからな。色々な意味でソレは管轄外だ。


 間合いを取った俺に向かい、ゴモリーがシャナリシャナリと近付いて来る。俺に対する攻撃の意志が見えないだけに、少しやり辛い。

 だが、コイツもこの国を混乱に陥れた魔族の1人だ。ぶっ倒すしかない。


「お~い、おい。ゴモリーよ、トールは吾輩の物だぞ? 横からしゃしゃり出て来ないでくれないか」

「ふーん? でも、ゴモリーも気に入っちゃったから。それに、略奪愛って言うのも素敵でしょ?」


 別に俺は、おまいらの物じゃねぇからな!? 第一バフォメットに対する愛なんざないわ!!

 魔族同士が言い争いを始める。おいおい、()を前にして随分と呑気だな、お前等。


「そのまま二人して墜ちろぉぉぉぉ!!!!」

「「!!」」


 ゴイン!! と言う鈍い音を響かせながら、俺が振り回したファティマをバフォメットがガードする。

 ギリギリと拳と斧とで押し合いをしながら、バフォメットがニヤリと嗤った。


「ほーれ見ろっ!! ライッバル、トォォォォルは吾輩をご指名だ!! 阿婆擦れの出番など無いわっ!!」

「あら! トールちゃんは、ゴモリーの方に攻撃(あい)を向けて来てたわよぉ。バフォが勝手に受け止めただけじゃない!!」

「どっちも吹っ飛ばすつもりだったわ!!」


 さっきまでの緊張感は何だったんだっちゅーの!! 作戦か? こっちの気勢を削ぐ作戦なんか?

 魔族同士でやいのやいの言いながらも、バフォメットはこっちの連続攻撃をキッチリガードしている。

 その度に衝撃波が飛び交うが、ゴモリーはソレを受けても涼しい顔のままだ。

 クソッ、これが【邪神の加護】の力か。生物としての基本スペックが違い過ぎる。


 だが、確かにバフォメットにガードされてはいるが、さっきよりもこっちへの反撃が明らかに少ない。流石のバフォメットも、口喧嘩をしながらじゃ、こっちに集中は出来ないって事か?

 少々情けない気もするが、こんな時に口喧嘩なんぞしてるお前らが悪い。このまま押し切ってくれるわ!!

 と、目の前を通り過ぎる踵を俺はとっさに仰け反って避けると、そのままバク転で距離を開ける。


「バフォにばっかり熱い視線を送っちゃダメよぉ。ゴモリー嫉妬しちゃうんだから」


 マジか。ケンカするならしてろよ。こっちは構わないからよ。

 ゴモリーが連続で足技を繰り出して来た。俺はソレをファティマで受け流す。

 なる程? こっちは戦闘狂と言う訳では無いからか、バフォメット程の速さも重さも無い。それでも、体重を乗せやすい蹴り技を主体にする程度には戦い慣れてはいやがる。

 だが、この程度の蹴りの重さであれば。


「ファティマ!!」

『【了解】サー! イエス、サー!!』


 ファティマが振動し、ゴモリーの脚を弾き飛ばす。それで出来た隙を見逃さず石突で腹部を突き、大技の為の間合いを取る。


「うぶっ!!」


 ゴモリーが腹を押さえ後ずさった。良し!! これで決めてやる!!


「とは、いかんのだよ!! ライバル、トール!!」


 俺のフルスイングがゴモリーに当る前に、バフォメットが攻撃をインターセプトする。ゴォン!! と言う鈍い音。衝撃波が周りに広がる。力の乗り切らない一撃では、さすがにバフォメットをぶっ飛ばす事は出来なかった。


「ああん!! せっかくトールちゃんの攻撃(あい)を感じてたのにい~!!」

「それは、吾輩が独り占めである!!」

「や~ん、ゴモリーも感じた~い!! 感じさせた~い!!」

「引け!! 阿婆擦れ!! トォォォォォォォルは吾っ輩が堕としている最中~だっ!!」

「ダッメッ!! ねぇトールちゃん、無理矢理って言うのもたまには良いでしょ? ゴモリーをぉカ、ン、ジ、テ!!」


 そんな会話をしながら、二人が次々に攻撃を仕掛けてくる。

 教育に悪すぎるだろう!! 戦闘しながら紛らわしい会話してんじゃねぇよ!! ってか、向こうが明らかに集中して無いって状態なのにまともに反撃が通らない!! おまけにスイッチしてるかの様に連携が取れてやがる。二人同時に攻撃してこないって事だけが不幸中の幸いだが、それも作戦の内か? 

 おそらくバフォメットの方にはそんなつもりは無いんだろうが、ゴモリーの方、コレ、俺の心を折りに来てるだろう。力の差を見せつけても、それを発奮材料にして俺が地力を引き上げたから、それとは違うアプローチで。クソッ!! 本当に厄介すぎるわ!! せめて、どっちかに集中できれば!!

 ファティマを回転させる様に使い、刃と石附、両方で受け流し反撃しを繰り返すが、正直埒が明かない。

 どこかで流れを変えねえと、これ、延々と終わらんぞ。

 もし、やるとしたらゴモリーの方を狙うのが正解なんだろうが……どうにか……


 俺がそんな感じで攻めあぐねて居ると、背後からの魔力が突如大きくなったかと思うと俺を避ける様に軌道を変えながら、人、1人を完全に飲み込むほどの巨大な【ファイアボール】が、ゴモリーを包み込んだ。


「トール、さまに、ちかづか、ない、で!!」

「イブ!!」


 魔族達の【恐怖(フォビア)】を【抵抗(レジスト)】したのか!? 俺の様にパッシブではなく、この短時間で、自分の意志で!!


 俺は思わず口の端をニヤリと歪ませた。


 だが、その炎が一閃され、その中からほぼ無傷のゴモリーが出てくる。マジか。いや、普通の攻撃じゃダメージは与えられないってのは聞いてたが。

 あの【ファイアボール】でもダメかよ。

 だが、そのゴモリーにウリが喰らい付いた。


「!!」


 辛うじて避けた様だが、その肩口にはハッキリと抉れた跡が。流石に、俺と同じプラーナ使いのウリの攻撃は通る様だな。てかあれ、外装流動での攻撃跡だよな。え? そこまでモノにしたん? ウリ。

 そして、回復自体は出来る様だが、ゴモリーの回復力はバフォメット程じゃない、と。とは言っても、回復できるだけで脅威なんだがな。


「ふぅん? なかなか熱い嫉妬の炎だったわよ? お嬢ちゃん? でも、トールちゃんの方がもっと熱かったかな? ふふっ零れてきそう」


 何がだ!! いや、言わなくて良い。

 腹部を押さえながらそんな風に言うゴモリー。何だこの歩く18禁!! そこに入ったのは石附での攻撃だからな!! 紛らわしい言い方すんなや!!!!

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