ふとした疑問
済みません。
少し遅くなりました。
「私も嫁いでから、主人にはほとんど会う事は無かったので、普通の夫婦がどうかなんて分からなかったのよね? そもそも、政略結婚で、国同士の契約でもあったから、私が耐えるしか無いものだと思っていたから……」
「無理は駄目だニャ。憤懣を溜め込んでたら健康にも悪いのニャ! 無理して辛くなるなら、無理せず笑顔に成るニャ。だからウチは、辛くなる前にダーリンに会いに来たニャ!!」
「そうねぇ。私もそれで一度、体調を崩してるから、今はトールちゃんにすぐに会えるから、随分と楽に成ったわ」
「ラブアンドスマイル! オールピースニャ!!」
……この会話嚙み合ってるのか? てか、バストさんや。ダーリンは止めてくれ。色々と拙い気がする。
せめてもの安心材料は語尾が『ニャ』って所か?
てか、会話が成立してるって事に驚きなんだわ。バストの能力、【闘争心や競争心、過剰な向上心を失わせる】ってぇのは、下手すると、意識喪失、幼児退行にまで至るってぇ結構怖い能力だからな。ああ見えて、【精霊】ってのは伊達じゃないんよ。まぁ、ここに居るメンバー……の内、第二夫人以外は、それに対抗出来るだけの精神力を有してるんだけんどもよ、第二夫人に関しては、その限りじゃないからなぁ。
軽く流してるけど、一時期の第二夫人は“体調を崩す”なんて程度の状態じゃ無かったからな?
それこそ、公爵が『あわよくば』とか考えてた程には醜聞じみた精神状態だったから。まぁ、それを考えれば、今、多少俺に依存してるって状態は、まだマシなんだろうけんどもよ。
だからこそ、こうやってバストと普通に会話出来てるってのが驚きなんよね。
第二夫人のカップが空に成り、イブがすぐさまお茶を注ぐ。
「有り難う、イブちゃん」
「んっ」
第二夫人に礼を言われ、イブが嬉しいのか鼻息を荒くする。まぁ、明言した事はないが、第二夫人が俺の生みの親だってのは、身近なメンバーの中じゃ公然の秘密だしな。そしてミカが育ての親なのが公式見解。
まぁ、それはそれとして、少なくとも、俺に好意的ではあるイブが、第二夫人に褒められれば、気分も良くなるだろうさね。
機嫌良く、イブはそのまま、他の皆にもお茶を注いで行く。こうして仕える者が気分良く働けるようにできるのも、上に立つ者の資質ってやつなのかね。流石は元“お姫様”だよな。お茶を飲む仕草も優雅だわ。
あれかね? 俺も一応貴族なんだし第二夫人の域を目指さんとあかんかね? まぁ一応、前世では社会人だった事も有って、最低限のマナーとかも知っちゃ居るが、流石に優雅にとはいかんからな。結局の所、付け焼刃みたいなものだし。
こうして、第二夫人の所作を見ると、俺のマナーなんてまだまだだよな。てか、そういう視点で見ると、バストの所作も結構綺麗だわ。精霊とは言え、それは自然精霊から【加護】を貰った人間って事の筈なんだから、つまりは元“人間”ってぇ事に成る。
恐らくは獣人の血の薄まった子孫で、あの、猫耳や尻尾は、つまりはそう言う事なんだろうな。
そう考えると、お姫様にマナーで比肩できる程度の家柄だった可能性もあるのか。
てか、そもそもバストが精霊に成ったのっていつ頃なんだろ? バフォメット辺りは知っては居た様だけど、それほど詳しくはなさそうな様子だったが。
これ、人間だった時のバストの事を知っている人物が存命の可能性も有るってぇ事だよな?
いや、まぁ、その辺は疑問に思っても追及はせんがね。藪を突いて蛇が出たら嫌だし。




