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いや、だからさ

「余の甥っ子は英雄であったか!!」


 ……何を言ってるんだろうね国王陛下(このおっさん)は。


「まさか、伝承や伝説でしか話を聞かぬ魔族の所業を突き止め、対峙していたとは!! いやはや、魔導帝国や魔人族国での、魔族を見たと言う噂は聞いておったが、いち早く、その陰謀に気付き、手を打っておるとは。うむ、流石はドラゴンスレイヤーと言った所か!!」


 その全て、俺が気が付いて手を打った訳じゃねぇからな!? 魔人族国に関しちゃ巻き込まれただけだし、魔導帝国の話持って来たのギルドじゃんか!!

 それと魔族と対峙してる事と、ドラゴンスレイヤーである事とは全く関係ないよねぇ!? 何が流石なのか全くわからんのじゃが!?

 あと、俺は別に甥っ子じゃないからな!!


「ふむ、獣人の王国国王からの直々の依頼で後ろ盾と成って()るのであれば、安全保障としての契約も交渉内容に入れられると言う事に成るか?」

「いえ、向こうが後ろ盾としたかったのは『冒険者、ドラゴンスレイヤーのトール』であって、決してオーサキ辺境伯と言う訳では」

「しかし、どちらもその方の事ではある」

「まぁ、そうなんですがね……」


 流石に国同士の事って所まで来ると、俺には理解の及ばない所もあるんで、国王陛下に、正式な報告を入れた訳だが、これ、一寸早まったか?


 俺が知りたいのは『面倒事を回避する政治的方法』であって、所謂、国家間交渉で有利にする為の方法な訳じゃないんだがね。


 まぁ、国王陛下にとっては、自国の利益を優先するのは当たり前の事なんだろうし、他国の国力が減退して、国家間の力関係が有利に成るのは好ましい事なんだろうが、あんまり阿漕な国家交渉の結果、向こうからこっちに気軽に手助けを頼めない状況っに成るってのは、あんまり有難い事じゃないんよ。当然、今関わってる魔族関係限定の話だけんどもさ。

 それ以外の国内での揉め事には極力自力で何とかして貰いたい所なんよね。少なくとも軍部は掌握出来てる訳だし。


 第一、その伝説伝承に謳われている魔族は、単騎で国を亡ぼせるって輩な訳だから、自国の利益だけを表に出すのは悪手だと思うんよね。


 実際、俺の会った事のある魔族って、どれ程個体戦闘力の低い奴でも、国落としは出来そうな輩ばっかりだし。

 バフォメットは言うに及ばず、ゴモリーだって、実際、国を崩壊させかけてた訳だし、ベリアルは、テイムしてた魔物やアイツの軍団考えれば、実際脅威だったからな。

 微妙だったのはガープだけど……いや、それでも城に残っていた兵士は鎧袖一触で、聖武器持ってた国王やエリスが居たから何とかなってたレベルだったな。


 そう考えると、獣人の王国で暗躍してる魔族は、実力的には未知数だけど、少なくても計略で崩壊させかけられてるってのは確かなんだよな。


 あれ? 俺が割と魔族の間抜けな所を見過ぎてるから評価低くなってるけど、実際、単体で国位落とせる連中なんか。うん。ちょっと認識を改めんと。


 俺が難しい顔をしてると、国王陛下は何か勘違いしたのか、少しばかり口の端をゆがめると『いやいや、冗談だぞ?』と言った。


「余とて、魔族の恐ろしさは理解しておる。ルーガルー翁からの報告も上がっておるでな。かの国と、其方の間に溝を作る様な事はせんよ」

「そう、配慮していただけるなら幸いです」

「第一、単騎で国を落とせる魔族も脅威ではあるが、そこはソレ、其方とて、やろうと思えばできるであろう? そんな其方の機嫌を損ねるような事、出来る訳など無いであろうよ」


 いや、国を預かる者として、正しい認識だとは思うが、そう言われると微妙な気になるんだがね。とか思ってたら、国王陛下がクククッと笑い声を漏らした。


「いやいや、これも冗談だ。確かに其方は強大な力を持って居る。だがな、それでも余は其方を恐れぬよ。少なくとも余は、其方の心根を知って居るからな。決して理不尽な暴力を使う者ではないと」


 さっきの俺は、そんなにひどい表情をしてたのかね? 国王陛下(セルヴィスおじさん)がそんなフォローを入れる位に。まぁ、有難くその言葉は受け取っておくけどさ。

 俺がほっと息を吐いたのが見えたのだろう。国王陛下は、更にクククッと笑い声を漏らした。


「そもそも、こんな可愛い甥っ子を、この伯父さんが怖がるわけにはいくまい?」


 いやだから、俺は甥っ子じゃねぇからね?

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