腐っても鯛
「それなら簡単ニャ。混じった【魔力】を使い切らせれば良いニャ」
うん。それって、普通に魔法攻撃かけるって事だよな。死霊に。知ってる知ってる。俺だけじゃなく、殆どの冒険者が。死霊には魔法攻撃しか効かないって。
取り敢えず落ち着く為に、イブの淹れてくれたお茶を飲む。フワリと柔らかい香りが心を落ち着かせてくれる。
お茶を飲み干したと見たイブが、再びカップをお茶で満たす。すっかりメイド業務も慣れたみたいだな。お仕着せも彼女に馴染んで、良く似合ってる。
俺は、執務室のソファーの体面に座るバストを一瞥する。俺と同じ様にお茶を飲もうとして、フーフーと息を掛けて冷ましてる。やっぱり猫舌なんかね。
え~と、はい。【魂】から【魔力】を引き剥がす方法を訊ねた、バストさんの回答がのっけのこの発言な訳ですが。結局、それってオーソドックスな上に、憑依されてた場合使えなくね? 攻撃魔法を撃ち込むのなら、普通に乗っ取られてる肉体の方にもダメージ行くんじゃが?
「え~と? つまりは、攻撃魔法で倒せ、と言う事で合ってるのか?」
会話って面倒臭いけど、それぞれの持ってる前提条件が違うと、まるっきり通じない事ってのが有るからね。なんとなく、俺とバストの思考に齟齬がある様な感じがするんで、一応確認の為に聞いてみる。
「……何で魔法攻撃をするなんて言う話に成るのかニャ?」
未だにフーフーと、お茶を冷ます事に集中しているバストがそう言った。
うん。やっぱり俺の思ってたのとは違うらしい。そもそも魔法攻撃は“なし”らしいし。
でもまぁ、ラブアンドピース謳ってるヤツが、のっけから攻撃を推奨しはしないか。
ただそうすると、どんな手段で【魔力】を使い切らせるのか、全く想像がつかんのだが? 結局、どうすれば良いのよ。
そう思って首を傾げる俺の反応に、イマイチ理解出来てないらしいと気が付いたバストが、一寸、お茶を飲んでみて、しかしまだ熱かったのか、再びフーフーと息を吹きかけながらも口を開く。
「? 【魔力】を使い切らせるんニャから、【魔力】をそのままぶつけるに決まってるのニャ」
思った以上にシンプルだったわ。魔法とかそう言う事じゃなくて、まさかの【魔力】直ぶつけかよ。そして一番重要なのは、【魔力】を直接ぶつけるって所やな。【魔力】を直接、だ。そう、つまり、俺には無理な手段な訳だな。うん。無理、なんだよ……
ま、まぁ、この件に関しては、イブとジャンヌに任せよう。
『【奮起】任せるデェス!!』
流石は腐っても精霊……いや、腐っては居ないのか、お花畑なだけで。まぁ、俺が予想してたよりは役に立ってくれたわ。
「よし、じゃぁ、帰って良し!!」
「いやニャ!!」
うおぉいぃ。ここに居るだけで、やる気を削いで下さりやがるような存在が滞在するって、単純にマイナス効果しかないんだよ! まさか、家の騎士団に巨人族と同じ鍛錬とかさせる訳にも行かんし。
「ここに居たいなら、せめて能力の制御をしてくれ」
ホントにこれ最重要事項だからな?
「制御ニャ?」
ようやくお茶をピチャピチャと嘗め始めたバストが首を傾げた。
って、全く分かってないのかよ!! マジでパッシブオンリー!? やっぱり能力じゃなくて体質なんかよ!!




