砦建築見学中
色々と考えると、近隣諸国の中で、結構な問題が出て来てるよな。その全部が全部って訳じゃないだろが。魔族によって引き起こされた物がどれだけあるんだろうね。
少なくとも『赤銅のゴブリンライダー』の件と、『魔人族国の内乱』。『魔導帝国への宣戦布告』、そして今回の『獣人の王国の獣人以外の排除』に関しては魔族の関与が有ったのは確かなんだ。
表に出て来ては居ないが、皇国の『始祖の黒鎧』の一件も、そうっちゃそうなの、か?
いや、これに関しちゃ、まだ魔族が盗んだのかどうかは分からんのか、それをダシに、俺の関与を疑う様に仕向けたのは魔族だとは思うんだが。
俺の周りだけでもこれだけの事例が有るんよね。にも拘らず、世間一般では魔族ってのは早々滅多にお目に掛かれない秘密に包まれた種族らしいぞ、と。
まぁ、それはさて置き、今日は犬達及び、イブとジャンヌ、ラミアー&セフィとティネッツエちゃんとで、遺跡の獣人の王国側に作ってる砦と言うか関所と言うか、何かそんな感じの所を見学しに来てる訳だ。
「……冒険者連中、相変わらずノリッノリだな」
「ワンワン!!」
「アン? アオン!」
「ワン」
「ワオン」
何かもう一定のテンポで次々に流れるような作業を行う作業員達に、犬達もご満悦。
「ん、良い、動き、です」
『【関心】淀みなく建造物が出来上がるさまは、見てて気持ちが良いデス!!』
「良くやるよねぇ」
『おなかすいたんで、プラーナちょうだい~』
半ば組み立て済みの壁やら屋根やらをドッキングさせるかのように次々と繋いて行く職人芸。信じられるかい? 冒険者連中素人なんだぜ。てか、前見た時は接合は建築従事者がやってたと思ったんだが? 何時の間に、そのポジションすらも冒険者に譲ったんよ。マジで。それとセフィ、そこ迄興味無いなら、お前何で付いて来たし。
まぁ、素人に砦作らせるなよとか思わんでもないが、素人とは言え、今回集められた面子は、ドワーフから同様の依頼を何度も受け、奴らの信頼も高い、半ばセミプロの様な連中らしいんだけんどもよ。
だからと言って、砦の外壁も同じようなノリで行くとか思わんわ。まぁ、内部作ってから、それに被せる様に外板を組んでるだけなんだがね。
当然だけど、仮にも砦となる場所だ。外壁が木造って事は無い。いや、木造壁でも強度確保出来りゃ構わんとは思うんだが。実は、今回、もう一つ試してる工法が有るんだわ。それが石灰、火山灰を使用した、所謂ローマコンクリートだ。
今立てている外板は、つまりは型枠って事に成る。後でここにコンクリートを流し込む訳だ。
「おい!! 何やってんだ!! 水平ズレてんぞ!! 糸に合わせろ!! 糸に!!」
「うっす!! すんませんしたっ!!」
いや、もうそんな事まで気にしながら仕事してるんなら、すでに冒険者じゃなくて職人だよね!?
You! もう、建築業に従事しちゃいなよ!!
次々に建ちあがる建造物に、一寸向こうで、同じように砦作ってる獣人の王国の職人さん達も唖然とした様子でこっち見てるじゃんか。多分あの人達、冒険者達の事、素人とか思ってないからね!?




