領主としてのお仕事
すぐに追いつくとは言っていたけど、ジャンヌも画像を共有できる所まで【絆】が高まってたのか。いや、助かるわ。実際、この方法は、聖武器が居ないと成立しない方法だよな。
肝心のアンデットは見つかってないが、取り敢えず観察する用意は出来た。アンデットは見つかってないが。
まぁ、元々レアな魔物らしいからなぁ。
【魂】から【魔力】を除去できる方法が見つかればベストなんだけど、まぁ、アンデットの効率的な倒し方が分れば御の字って所だろう。
人の体から、取り付いた死霊を引きはがす方法何かが分かるのなら、色々と助かるんだがね。
もっとも、その方法を探し当てるまでに、どれだけの死霊が必要に成るんだかってぇ話なんだが。
自然発生だと、希少な、アンデットって魔物の中から、さらに少ないであろう死霊がピンポイントで見つかるなんて言う、都合の良い事なんざ無いだろうし、そこまで望んじゃ居ないんだけんどもよ。
こうして探してる時に中々見つからないってのは、どうやら異世界でも共通らしく、アンデットが見つかったってぇ報告は、中々俺の所に届かなかった。
おそらく、最も数多くのアンデットが見つかるであろう場所が、事の起こった獣人の国の王都だってのが皮肉に過ぎるんだがね。
ソレが起こった場合に、出来る限り最悪の事に成らない様に、これだけ色々と準備してる訳なんだから。まぁ、その事が実を結んでいるかどうかは、また別なんだけんどもよ。
こう言った事は備えておく事にも意味があるって事にしておこう。うん。実際、心構えが有るのとないのとでは、随分違う訳だし。
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こう見えても、俺も色々とやらんくちゃならん事が立て込んでるんで、アンデット対策については、一旦置いておく事とする。
獣人の王国との外交関係については、既にお互いに使者を使ってのやり取りを行っている段階だ。本格的に始まるのは、獣人の王国の情勢が落ち着いてからって事に成る訳だがな。
その為に、正式な王国の使者さんが、家の領に頻繁に出入りしている。もっとも、それは“扉”を使用する為であり、要は港とか空港扱いな訳だ。
ぽーん。オーサキ航空108便、ご利用いただきありがとうございまーす。って感じだな。
で、それに関係して、王室との取り決めが一つあった。使者が“扉”を使うたびに、王室は、その転移の料金を俺に支払うって物。まぁ使用料だな。
これ、別に俺が言い出した事じゃなくて、王室からの提案。俺としちゃ、別に無料でも良いとか思ってたんだが、国王様から、『それじゃぁいかん』と言うお叱りを受けた。
俺の領地にある物は俺の財産であり、それを上から『使わせろ!』ってな感じに一方的に搾取するような行為は、むしろ王室が他の貴族からの信用を失う行為なんだそうな。
だから、俺の領地にある物を例え王室が使うっていう場合だったとしても、その使用料金は払わなけりゃいけない。いや、むしろ払う事が必須なんだそうな。
『そもそも、これからその“扉”を使うのは王室だけではあるまい?』と、国王様から言われて初めて、その可能性に思い至った俺は、領主として、まだまだ半人前なんだろうな。確かに、これから家から、獣人の王国へ行けるって事が知られれば、特に商人連中なんかは目の色を変えて『使わせてくれ!!』と言いに来るだろう。
何せ本来であれば、危険な外洋航海を経て、数か月の時間を掛けなけりゃ、訪れる事の出来ない獣人の王国のある大陸に、ほぼ一瞬で行ける訳だからな。そりゃ使いたがる商人も多いだろうな。
もっとも、馬車ごと“扉”で移動できるとは言え、一度に運べる荷物の量は、船の方が圧倒的に多いんだけんどもさ。




