アイデンティティー
結局の所、戦闘の究極は“自分に被害無く、相手に大ダメージを与える”ってぇ事な訳だ。
それ故に戦闘ってか、もう、原始的な戦いは、素手から石や棒、棒から刃物、刃物から剣、剣から槍、槍から長槍へと進化してきた訳だな。
もっとも、戦闘が距離の有力だけで決まるなら、最強は大陸間弾道ミサイルか衛星レーザーって事に成るんだが、そこまで行くと、もはや個人的戦闘力とかって次元じゃ無いだろう。流石に。
ただ、この世界には、そう言った超兵器が有ったとしてもそれを凌ぎ切れるだけの個人戦闘力を有する者も居る訳だが。
例えば魔族とか。いや、それも条件次第って気もするが。バフォメットとかベルゼブブ辺りは超速再生したり、生体磁場で防げたりするイメージが有るけど、ガープ辺りは一発で退場しそうな、ね。
ゴモリーは……ほら、アイツってギャグ枠だから。
と、俺がこんな事を改めて確認している理由はと言うと……
『【愕然】なんですかねコレもうオーナー単体で完成してるじゃないですかボクが入り込む隙とか全く見当たらないんですけども聖斧がバージョンアップをしたくなった気持ちが痛いほど良く分かってしまったデス』
一息で言い切ったな。うなだれるジャンヌからそっと目を逸らす。最近は自覚する様にしてるが、こう見えて俺、バフォメットとかとタメを張れる戦闘力を有してる訳じゃん?
つまりはそう言った超生物の領域に片足突っ込んでる訳よ。いや、人間辞める気は無いんだが。
で、【プラーナ】を使えるって事で、その応用である【エクステンド】を使ってジャンヌをコーティングの上、発熱、回転までを一セットで行ったら、まぁ、エライ威力に成った訳だ。
いやぁ、プラーナドリルとジャンヌの相性良すぎ。ただ、確かにコレの軸に成ってるのはジャンヌなんだけど、攻撃で使用してる能力って、全部俺固有の奴じゃん? なんで、ジャンヌもファティマと同じ結論に達しちまった様なんよね。
つまり、『この攻撃に、自分必要だった?』的な? 武器としてのアイデンティティーを失った的な?
いやぁ、聖武器達、人型に変形『【訂正】変身デス!』あ、はい、変身できるのに、そのレゾンデートルは、あくまで“武器”の方にあるんな。
「いや、でも、魔法使いながら攻撃とかジャンヌが居ないとできない攻撃方法だし」
『【嘆息】でもそれって、個体名【ケルブ】にマウントされてても同じ事出来るのデス』
うわぁ、面倒臭い拗ね方し始めやがった。
……これは、あまり使いたくは無かった手なんだがな。
「ジャンヌ、お前の言う“覇王”ってのは、この程度の事も出来ない程度の者なのか?」
『【天啓】!! そう、デス。天下を統一する猛者であれば、この程度できて当然デス!!』
「そうだ、当然だ!! ならば、お前の認めた俺ならば……」
『【驚愕】この程度の事、当然できていなければならないデス!!』
ここで、意味有り気に頷いておこう。本当に出来て当然なのかなんざ、俺に分かろう筈なんざ無いからな!!
ただなぁ。恐らく俺と同じ【プラーナ使い】であっただろう“闘神”とか“始祖皇帝”とかが居るから、あながち無茶言って無い可能性も微レ存と言う。
『【発奮】むふぅ!! これは、聖斧が戻ってきたら、早速ボクも、管理人に会いに行かなければ!!』
色々、問題を先送りにした感もあるが、取り敢えず、ジャンヌが前向きに成って良かったわ。
ただなぁ、なんかジャンヌって結構打たれ弱くねぇか? 精神的に。まぁ、良いけど。




