心配をかけたっぽい
ひと段落が付いたおかげで、自領に戻ってこれたのは良かったんだけんどもよ。
「溜まってるなぁ。仕事。何でこんなに書類に目ぇ通さんといかんのやろか」
『【苦笑】それは仕方のない事かと』
『【発奮】ならやっぱり天下統一するデス!! そうすれば書類仕事なんてしなくて良いようになるデス!!』
しないよ? 天下統一とか。むしろ書類仕事をしたくない為だけに統一された天の下の人々の方が可哀そうだと思うよ?
まぁ、これに関しちゃ自業自得って面もあるんだけんどもよ、予想外に向こう行ってる時間が長かったせいでもあるんよね。
流石にヴォルフガング伸して終わりだとか思っちゃいなかったけどさ、貴族同士のやり取りみたいな所が予想以上に時間が掛かった。
『【苦笑】それは仕方のない事だと思います。通常であれば、こう言った貴族同士の根回しと言うのは何年もの時間を掛けて人脈を培った上で行う物ですから』
うん。それは理解してるんよね。そういう意味ではスーリヤとイネスさんにはお世話になったし、彼女達が居なければもっと時間も掛かってただろうと思う。
『【嘆息】むしろ国王にあんなに権威が無かったとは思わなかったデス』
「それな」
思わず声で答えちまったよ。
チラリと頭上を見る。うん。起きてないな。
今、俺は執務室に居る、その作業机の椅子の上、に座った第二夫人に抱きしめられた格好で。
何でこんな事に成ってるかと言えば、まぁ、俺が何か月も領地を離れてた所為だな。
元々、精神的に不安定だった第二夫人だが、ここ一年ばっかしはそれなりに安定して来ていた。それで、俺がまぁ“扉”の調査に行くって言った時も、割と平気そうだった事もあって、領地に残して行った訳なんだが……
「やっぱり予定外に長期に成っちまったのが悪かったんかね?」
『【肯定】多分そうですね』
『【同調】それ以外に考えられないデス』
「ハゲドウ」
書類仕事とかの話には入ってこなかったのに、この話には入ってくるんなラミアー。俺が執務してる時はソファーでゴロゴロしてるのがデフォルトのラミアーも話に入ってきた。
因みに犬達はドッグランの方へ。ただしバラキだけは俺のってか、今は俺を抱っこしてる第二夫人のだが、その足元に居る。
イブはメイドのお仕着せに着替えて館の仕事の方へ、ティネッツエちゃんはお母さんの所へ糸紬の手伝いに行っている。
セフィ? 知らん、どっか行った。
それは兎も角、まぁ、公爵家の方で色々と有った事もあって、第二夫人は今、俺の領地に居を構えている訳だ。それに関して公爵は、何も言っては来てないらしい。『手紙の一通も寄こしやがりませんね』とは第二夫人の専属侍女のジョアンナさんの言葉だ。
まぁ、そんな感じで、第二夫人、俺に依存気味だった訳なんだが、それもここ一年位は良い感じで治まってたんだけんどもなぁ。予想外の長期留守のせいでぶり返しちまったらしい。
一応、獣人の王国に入り込んで来てる、ルーガルー翁の部下経由で、定期的に手紙も送ってたんだがねぇ。
俺が帰って来た時、第二夫人、幼子もかくやと言った感じで泣きながら抱きしめて来たと思ったら、そのままどこに行くのにも付いて来て、今はこうして、俺を抱きしめたまま泣きつかれて眠っちまったってぇ訳だ。
「愛されてますなぁ」
ニヤニヤしながらラミアーが言う。まぁ、これに関しちゃ第二夫人の精神的な物もあるとは思うんだが、元々彼女が精神バランスを崩した原因の一つも俺達の事が有ったからだからなぁ。
「まぁ、自覚はあるよ」
家族としてだけどな。だから、そのニヤニヤした笑い方止めろ。




