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軍務卿との対決

「だ、誰か!! 誰かあの者を!!」

「『誰か』、じゃねぇよ。自分でやれよ」

「ひぃっ!!」


 軍務卿なんだよね? 兵士の一番上の人なんだよね? ここ、獣人の王国で、『強い人ほど尊敬される』国なんだよね? 何故、自分で戦おうとしないかのね?


『【嘆息】家柄だけでのし上がった弊害でしょう。だからこその老害です』

「汚物は消毒だぁ~」


 それ、燃やのす前提じゃん。やめてよ炎上とか。


 軍務卿が狼狽えた様子で周囲を見回すと、彼の取り巻きらしき軍人さんらが一歩前へ出て剣を構える。珍しいね、獣人の王国じゃ、武器ってサブウェポン扱いなのに。

 それよりも、こんな弱腰ってか腰が引けてる様子の軍務卿を見ながらも、彼の為に動けるってのは、よっぽど軍務卿の事が好きなのか、彼の持つ権力が魅力的なのか、それとも恩があるのか。


「トール、様、の、邪魔」

『とーるんのじゃましちゃ、だめだよぉ』


 それに反応したのはイブとセフィ。イブが珍しく氷系の魔法で相手を凍らせ、セフィは、何時もの如くツタで絡め捕る。いや、過剰戦力だぁね。


「ひぃ!」


 一瞬で無力化された取り巻きを見た軍務卿が悲鳴を漏らす。『ひぃ』て、何これ? まるで俺が弱い者苛めしてるみてぇじゃん。


「実質、そんな感じ」


 にやにやとしながらラミアーがそう言う。いや、ラミアー、お前はどっちの味方か。


「当然トールの」


 ノータイムで返事が来たよ。あー、うん。有り難う。

 まぁ、それはそれとしてだ。


「覚悟を決めなよ爺さん」


 そう言って、俺が聖斧(ファティマ)を軍務卿へと突きつける。周囲を見回し、味方が居ない事を察した軍務卿は、腰に携えていた軍刀を抜いた。

 ふぅん? あれだけビビってた割には良い構えだ。成程、“ルビコン川を越えた”か。覚悟が決まった様だな。


 軍務卿、アルバストラが軍刀を大上段に構える。それを見て俺は「へぇ」と声を漏らした。

 そもそも上段の構えってのは超攻撃の構えだ、中段の構えってのは攻撃防御、どちらにも即座に切り替えられる、言わばニュートラルな構えだし、下段は相手の機動力に対して即座に反応して攻撃の出来る。やや守りの構えなのだが、上段の構えは最速で攻撃に移れる代わりに、胴体に対する防御を完全に捨てる事に成る。

 ぶっちゃけ攻撃速度ってぇ一面だけ見れば、中段からの刺突が最速ではあるんだが、その辺は槍と同じ様なもんだ。

 ただ、その威力ってぇ意味では上段の方が数段上なのも確かだろう。


 なら、小細工は無しだ。真っ向からぶっ飛ばす!!


 アルバストラと視線が交錯し、互いに一歩を踏み出す。流石に、速い。

 ()()……俺は、振り下ろされる軍刀にファティマの刃部分を()()()それを弾き飛ばす。


 俺の『(はじ)き』の威力に、アルバストラの軍刀が、その両腕ごと頭上に押し戻された。

 それでも構えとしては上段の構えに戻っただけだと判断したのか、アルバストラがさらに踏み込んで……来ようとする前に、俺は半歩踏み込んで、縦方向だったファティマの軌道を横へと変更する。


 と、同時に、刃面から、横面へとファティマを()()た。


 バゴンッ!!


 と言う、おおよそ人体が鳴らして良い訳の無い音を立てると、アルバストラは、そのまま横へと吹き飛んだ。バウンドしながら。


 ……おおう、予想以上にアルバストラの体重が軽かったせいで思ってたより吹っ飛んだわ。


 生きてるよな?

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