軍隊って士気が重要なんよ
「そんな、馬鹿なっ!!」
ワナワナと震える軍務卿の口から、そんな言葉が零れ出る。
狩りの場所に着いてから、こっちの戦力をやっと把握する辺と言い、戦力を無駄に分散させる事と言い、根本的に軍務ってヤツに向いて無いんじゃね? コイツ。
『【嘆息】家柄と序列と実家の威光だけで軍のトップに成れた、無駄に年を食った老害の典型ですね』
「ハゲドウ」
辛辣だなおまいら。でもまぁ、軍のトップを張るって言うなら、『ぼくの考えたサイキョーの軍隊イィ!!』とかってアホな物目指すとかしてないで、周辺諸国とのバランスとかも考えての集団造りをしてもらわんと。結局の所、偉い人って政治感覚も大切なんだよな。
キャンプ地中央に並べられたトロルの角。その数はどう見ても俺達パーティーの方のが多いと分かるやね。
軍の討伐数の約1.2倍程度だけど、確かに軍の方より多い数の角が、そこには有るんだし。数の上では圧倒的とは言い難いけど、それでも単純にビジュアル的にも理解できるだろう流石に。
何せ、負傷者も多数出してる兵士達に対し、こっちは無傷でこの場にいるんだし。
それにそっちが、予め用意してた角を混ぜて嵩増しした上で、その数に成ってるのも知ってるねんで、と。
俺等は俺等で角を管理してたんで、家の方からパクって減らすって事も出来なかった様だしな。
「アルバストラ様……」
副官っポイ獣人の人が軍務卿に声を掛けるが、その声も聞こえないのか、プルプルと震えながら、俺の方を睨んでいる。
いや、こう言う状況だからこそ、クールになれや軍人なんだからよ。てか、アルバストラって言って言うんだな、軍務卿。まぁ、すぐに忘れるとは思うが。
「コ、コイツ等を殺せえっ!!」
態々場所まで指定して来たんだから、他にも何か策があるんかなぁとか思ってたんだが、何も無いんかよ。
自分で指定して来た勝負だってのに、勝てなかった後の最終手段がソレってどうなん?
軍務卿の命令に、しかし兵士達は戸惑った様子で、動かなかった。
まぁこれ、王命での正式な勝負だし、それに負けたからって『殺せ』とかさ。それって結局、王命に逆らうって事に成る訳じゃん?
つまりは国家反逆罪。事実上の軍事クーデター。
それを理解できれば、早々動けはしないだろうさ。
その上、この兵士の中で、俺達に助けられた人間がどれだけ居るかと思ってんだろ。
その事を恩に感じて無くても、俺達と自分等との戦闘力の差異は、充分感じてるだろうさね。
良くも悪くも獣人ってのは単純戦闘力の高さに敬意や畏怖を感じやすいみたいだし、それもあって、俺達に敵意を向けようってな気持ちが萎えてるっぽいな。知らぬは本部で引き籠もってた軍務卿と、その取り巻きのみと言う。
ほら、兵士の中からは、敵対したくないと言う声がチラホラと……
「ラミアー様と敵対なんて!」
「イブたんは俺の嫁!!」
「セフィ様の御心のままに!」
「ミカ殿に踏まれたい!!」
「バラキちゃんモフモフゥ!!」
うおおおいいいいぃぃぃぃ!! なんかそれ以外の理由の輩が彼方此方に居るんじゃが!?
獣人だとどう言う定義に成るんだ? ケモナーってよぉ!! だぁがしかぁし!! ミカとバラキに相手をして欲しいなら、まず俺を倒してからにしろぉ!!
それと! 前も思ったが、ロリコン多いな!! この世界!!




