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作戦会議をしましょうか

 変形したファティマに、ゴドウィン侯の目が驚愕の色に染まる。


 玄関先ではなんだからと、客間に案内されフレッシュジュースを出された後、聖武器であるって証拠を示すって運びになった訳だ。


 で、実際目にしたゴドウィン侯の反応がこれ。


 うん。ビックリするし疑問に思うよな。武器をロボメイドに変形させる意義とかさ。

 まぁ、そこは意志を持(インテリジェ)つ武器(ンスウエポン)のストレス軽減的な意味があるらしいが。

 この事は、ファティマが製作者に聞いたんだと。


 ……人型に成る事でストレスが軽減されるって事は、元になった()()の人格があるって事じゃねぇのか? 元々武器だったのならストレスとか無いと思うし。

 この辺り、深く突っ込んだら、重そうな設定とか出てきそうだから、あえて突っ込みはせんが。


 ファティマ自身には、元に成った人格が有るとかって自覚はなさそうだが、どうなんじゃろ?


 ……うん、分からん。


「どうじゃ? ちゃんと聖斧を……」

『【要請】個体名【ファティマ】と呼ぶ事を推奨します』

「……ファティマを探し当てて来たのじゃ」

「……これが、伝説に聞く……他の聖武器は宝物庫に仕舞われていますからな。存在しているだろうとは思っていましたが……」


 そう言って、ゴドウィン侯が壁に立てかかったファティマに手を伸ばす。


「っつ!!」


 バシンッ! と、ファティマが振動し、その手を弾く。俺の時は魔力装甲を発動してたから平気だったが、素手で弾かれたゴドウィン侯は、余程痛かったのか、弾かれた手を抱く様に後ずさった。


『【警告】サーとそのファミリー以外の人間が私に触らないでください』


 その声を聞き、ゴドウィン侯がエリスの方を見る。彼女も眉根を寄せ、困ったもんだと言う表情を返した。

 マトスンの一件以来、ファティマは俺達以外の人間に触られるのを極端に嫌がる様になった。まぁ人間嫌いとか人間不信みたいなもんだな。

 いや、最初の一件の事だけなら、マトスン本人に対する不快感程度の話だったんだが、あんにゃろ、事ある毎にファティマに近付こうとあの手この手で迫ってきたせいで、彼女の中のトラウマがバージョンアップの上、上書き保存されまくって、見事に拗れちまったんよ。

 たった2日でどんだけ粘着しやがったんだ、アイツ。


 最初から一緒だったメンバーは慣れも有って平気なんだが、その中でファティマの重量を支えられる相手って、俺かウリくらい。

 ウリは基本武器なんぞ使わねぇから、実質、俺一択。


 ロボメイド時も一応戦闘はできるんだが、コイツの真骨頂はやはり武器に成ってからだ。つまり、真価を発揮させたいのなら、武器状態で使えって事だな。

 何せ、俺の全力全開、魔力装甲ありきのフルパワーでも壊れないくらいだしな。

 トラウマは発症したが。

 どうでも良いが、俺の家族枠から何気に外されてるんだが、マトスン。オマエ、どんだけ嫌われてるんだ?


「さ、流石は伝説の聖武器。武器自身が使い手を選ぶと言う事ですな」


 違います。単なるトラウマのせいです。ウチのマトスンが迷惑かけます済みません御免なさい。


「して、『(サー)』とは、どなたの事ですかな?」


 ゴドウィン侯の問い掛けに、エリスが俺の方をチラリと見る。俺の事をバラしても良いか? と言う事だろう。

 まぁ、いつまでも黙って居るって訳に行かないし、そもそも、戦闘の時には顔を晒さなけりゃいけなかったんだから、丁度良いっちゃあ、丁度良い。

 この場にはエリスの信頼する者しかいないんだから、後々の根回しとか口止めもし易いだろう。やるやらないは別にして。

 俺はイブに目配せして下に降ろしてもらう。


「んん?」

「……お初にお目にかかるって言えば良いのかな? 俺の名はトール。ファティマからは(サー)と呼ばれている」

「はああぁぁぁ!?」


 ******


 俺の言葉を聞いて、口をパクパクとさせてエリスと俺とを交互に見ていたゴドウィン侯だったが、紅茶をひと飲みして落ち着いたのか、今は俺の事をマジマジと見ている。

 ……魔人族から見ても、俺の存在って理不尽なんか。

 喋る1歳児より、ライオンヘッドの方が、よっぽど不思議(ファンタジー)度上じゃね? なんか納得がいかねぇ。


「ゴホンッ! え、え〜と、では貴殿がトール卿と言う事かな?」

「卿は要らんよ。ありゃ、ファティマからの愛称みたいなもんだ」

『【訂正】サー、友愛だけでなく敬愛もしていますサー』

「あ、うん」


 改めてファティマを担いでソファーに座った俺は、ゴドウィン侯と対面した。

 今の所、ファティマを使えるのが俺しか居ない事もあって、俺達をどうやって魔族の所まで送るか? って事が問題な訳だ。


 俺一人だけなら、何処となりでも入り込めるんだが、流石にピンポイントで魔族の所には行けない。

 その辺りの案内のできる人間はどうしても必要だ。

 それに、置いて行ったら、多分絶対ファティマが拗ねる……じゃなくて、この為に探し出したんだから、置いていくとか本末転倒だしな。


「わたし、も、いく」

「は?」

「当然、ワシもなのじゃ」

「はぁ?」


 何言ってんだろね女子2人。

 魔族には普通の攻撃は効かないんだってばよ。

 確かに二人なら、ファティマも嫌がらないだろうが、ちみたち2人がかりだったとしてもコイツ持ち上がんないかんな?


「大丈夫なのじゃ! ワシに良い考えがあるのじゃ」


 自信満々で、そう言うエリス。聞いてみない事には判断はつかないが、俺としては旗頭に成っている者が前線に出る事は、あまり好ましいとは思わない。

 確かにそう言う事で士気が上がったりする場合もあるが、今回のこれはちょっと違うだろう。

 見れは、ゴドウィン侯も乗り気ではない様だ。

 やや否定的な目を向ける俺達に、エリスは、ゴホンッ! と咳払いをした。

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