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到着したんよ

 旅は俺とロボメイド以外は犬達に騎乗しても他う事にした。

 エリスがやいのやいの言ってたが、そこはスピード勝負なので強引に納得してもらう。空飛べるったって、コイツ、短時間しか飛べねぇんだもんさ。


「うひゃあ!! 早い!! 地面が近いのじゃぁ!!!!」


 高速で過ぎ去る景色に、エリスが目を白黒させている。邪魔な木々はへし折り蹴り折り、手は止めず、むしろ加速する勢いで道を切り開きながら先へ先へと俺達は進んだ。


「うるさいぞエリス。少しは黙って乗れ。イブを見てみろ、微動だにして無いぞ?」

「それは、ソヤツがおかしいのじゃ!!」

「エリス、チキン」

「ぬ!!」


 犬の上で喧嘩を始めんなや。おまいら乗せてるミカとラファが迷惑そうにしてるからな。

 俺は走りながら嘆息した。


 ******


 俺達が王城に着いたのは、王弟軍が王都まで後2日程の距離まで迫った頃だった。道中、関所等を避ける為、基本、街道を逸れた場所を一直線に突っ切って来たって言うのに、結構なギリギリ感。


「うぬ、間に有った様じゃの」

「フンスッ!」

「うん、イブのおかげだな」

「フンスッ!」


 何故イブが鼻息を荒くしてるかと言えば、風魔法で、【追い風】と【スリップストリーム】を作り、移動速度を上げててくれたからだ。

 いや、一日8時間魔法使ってて、魔力切れに成らないとか、どんだけだよイブの魔力量。

 俺がいったいどれだけ魔力切れを起こして来た事か……あ、あれ“プラーナ”だったんだっけ? うん、魔力ですらなかったわ。

 道すがらロボメイド改めファティマに話を聞いた所……あ、ロボメイドはファティマって名前に成りました。


 命名俺。


 だって、コイツ、時折俺が呼んでた『ロボッ娘』って名称気に入ったらしくて、自分の個体名それにしようとしてやがったんだよ。

 いや、止めれって言ったら『【懇願】サー、ではサーが私の名称を付けてくださいサー』って言って来たんで、ファティマって名前にしたんだ。

 “奇跡”で有名な土地の名前でもあるけど、どっちかって言うと“五星物語”の方が頭に過ったかもしんない。ロボメイドだけに……あれはメードだったか。


 そんな事はどうでも良くて。


『【不穏】サー、何か? サー』

「ナニモカンガエテナイヨ?」


 はいはい。プラーナの事プラーナの事。プラーナは“生命の根幹”を成すエネルギーの事で、ここから魔力や生命力、意志力や精霊力と言った力を引き出す事ができるらしい。つまりは魔力なんかよりもさらに根源的な力ってこったな。

 原油に例えると分かり易いか? こっからガソリンやらアスファルトやら合成ゴムやら作るじゃん? あんな感じ。

 もっとも、プラーナの場合、それぞれの『世界』から力を引き出す為の触媒的な役割らしいんだが……良く分からんかったからその辺聞き飛ばした。

 てか、この世界、魔力と生命力だけじゃ無かったんだなって方が気になったわ。うん。


 で、俺が魔法を使う場合、そのプラーナを先ず魔力に変換しないといけないらしいんだけど、その為には無意識領域に変換器(コンバーター)を形成しなくちゃならなくて、その為に集合無意識にアクセスして、そこからアカシックレコード内のアーカイブを呼び出して……って、ややっこしいんじゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!


 とてもじゃないが移動中に如何こうできる範囲超えてるわ!!


 こんなに苦しいのなら魔法など要らぬ!! って嘘です。魔法……使いたかとです。


 それで今、俺達が何してるかって言うと王都の一角で、エリスの親派に連絡を取って貰ってる所な訳だ。

 このまま王城に行ったって、修道院に追放されたエリスが素直にパパん所に行ける訳ないからな。

 城下町に入る門で、エリスの顔を知っている兵士が、彼女の後見人の貴族に伝令をしに行ってくれている。

 その間、俺達は元兵士って男のやっている宿に来ていた。門の兵士も、宿の元兵士も、エリスの顔を見て安堵すると共に、同行している俺達を見て訝し気な表情を作ってた。まぁ、幼児幼女にロボメイドと犬×5だしな。分からんでもない。


 宿で寛いでいるとコンコンとノックされ、下男が言伝を持って来た。


 ******


「姫様あああぁぁぁ!! 良くご無事でぇ!!」

「うむ、アンドロス侯も無事で何よりなのじゃ」


 なんか高級そうな馬車の迎えに乗って、向かった先はやけに広い庭を持った豪奢な屋敷だった。ここがエリスの後見人やってる侯爵さんのお屋敷らしい。

 で、そのまま馬車で乗り付けて、案内された玄関前に立って居たのがゴトウィン・フォン・アンドロス侯爵その人。

 ゴトウィン侯は、立派な鬣を湛えた獅子頭の老紳士で、何と言うか、エリスを本当の孫の様に可愛がっている人物だそうだ。


 そのゴトウィン侯、エリスを抱きしめひとしきり彼女との再会を喜んだ後、ギロリと俺達を睨んで来た。


「で? キサマ等は何だ?」


 その視線に、ファティマが俺達とゴドウィン侯の間に割って入る。

 だがまぁ、ぱっと見、色物集団にしか見えないからな。その質問はもっともな事だ。

 今は俺は普通の赤ん坊のふりをしている。

 隣国の上、変な噂がある訳でも無いのだから、最初から普通の赤ん坊じゃないって所を見せつけても良いんだが、下手に混乱させるのもどうかと思ったからだ。


 と、言っても黙ってイブに抱っこされてるってだけだがな。


「アンドロス侯、失礼な真似はするな。この者達はワシの恩人で援軍でもあるのじゃぞ?」

「は? え? この者達が、ですか?」


 一瞬キョトンとした顔をしたゴドウィンだったが、すぐにその目にはエリスに対しての憐憫が混じる。

 見れば、整列しているメイド達の中にも眼の端に涙が溜まっている者がちらほら。


「ワ、ワシは別に重圧(プレッシャー)のあまりに、現実逃避などしては居らんのじゃ!?」


 その視線に気が付いたエリスは、顔を真っ赤にして、そう叫んだ。いや、もう一度言うが今の俺たちの面子は幼児幼女にロボメイドと犬×5だ。到底役に立つようには見えない。

 ましてや相手は魔族だぞ? エリスは一旦、周囲からどう見えるか考えた方が良いと思います。


「その証拠に、こうして聖斧も持って来ておるのじゃ!!」


 そう言ってエリスが指さしたのはファティマ。今のファティマはロボメイド。意思を持(インテリジェ)つ武器(ンスウエポン)の概念すら無い様なこの世界の住人に、コレを武器として紹介したらどう成るか。


「は?」


 結果、その、可哀想な者を見る目がさらに深まった。

 まぁ、そう成るよね? うん。

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