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噂話

「あれ?」


 何時もの様に地下保存庫の整理をしていてある発見をした。


「芽が出てるな」


 おそらく前世で言う芋類に近い植物なのだろう。切り落とされたくず野菜から芽が出ていた。

 これって、植えれば育つって事だよな? ならば、やるしかないだろう! 家庭菜園と言うものを!!


「まぁとりあえず、これは隔離しないと」


 ジャガイモと同じで毒があったら大変だからな!! 主にミカがつまみ食いしたりしたらな!!

 うん、自給自足が出来る様に成れば、今の様な巡回しつつ食べ物を探しまくらなくても済む様に成る。そうなれば、もっと生活基盤は安定するだろう。

 早速、土堀大好きっ子(ガブリ)に中庭を耕してもらうか!!


 ******


 仔犬達はヤンチャ盛りで、新生児の俺が呆れる位暴れ回ってくれる。ぶっちゃけ、中庭や礼拝堂位じゃ狭い位だ。

 俺も混じって遊びはするが、正直、ついていけないと感じる事もしばしば。俺も年を食ったって事か……

 って、イヤイヤ、俺、新生児! 生まれたばかり!! 俺、まだ若い!!

 って言うか、もうすぐ生後1ヶ月で、これだけ動ける俺って何だろう? チートか? チート持ちか?

 だが、魔法は使えない! 残念!!


 それはともかく、遊びたい盛りの仔犬達には、この教会の敷地だけでは不十分なのも確かだ。ただ、首輪やらリードが無いこの世界、現状、この子達を引き連れて街中を散歩するってのもリスクが高い。そうなると、この街を囲ってる防壁の外に出たいのだが、その為には、もっとこの街についての情報収集が必要だ。

 だが、俺だって、あまり街中を動き回っているのは良くない。


 魔法なんて物が在る、このファンタジーな世界でも、赤ん坊が当たり前の様に歩き回る事は無いらしい。

 それは、ミカにまたがる俺の姿を見たおばさんが腰を抜かして居た事でも確かだろう。

 自分だって、ケモ耳、尻尾装備のファンタジーの住人なのにな。理不尽だ。

 そう言った不必要なリスクを回避する為には、やはり情報が必要で、その為には街中で聞き耳を立て捲る必要が出てくるわけで……


 何、この矛盾。


 まぁ当面は、こっそり街中を巡回しつつ情報を集めるのがベストか。幸い、俺もこの世界の人達が何を言ってるのか分かるようになって来たしな。


 小さな事からコツコツと~!! ってなもんだ!!!!


 と、言う訳で、今日も巡回しながら情報収集。魔法を使う所を見つけたら、詠唱も耳コピ。

 こっちの言葉を覚えたから気が付いたんだけど、どうやら詠唱は日常会話とは別言語らしい。

 ぶっちゃけ、丸暗記しないといけないんで何度も聞き直す必要がある。

 なので、屋台のおっちゃんなんかで、営業時間が大体決まってる人の所へ行って詠唱に聞き耳をたてるのが、ある意味日課となっている訳だ。


「よう、まぁだ潰れて無かったんか」

「は! 手前が野たれ死ぬとこ見なけりゃ、おちおち店なんざ潰してらんねぇわ! いつ、カミさんに言い寄られるか!!」

「カッカッカ! お前のカミさんに髭さえ生えてりゃ、俺の好みなんだからな!!」

「とっとと、注文だけしてくれ!! この、ろくでなしの因業鍛冶屋が!」


 何時もの屋台で、盗み聞き……ゲフンゲフン、情報収集をしてると、常連のおっちゃんが屋台のおっちゃんと話始めた。

 常連の方のおっちゃんは髭面で頭身が低い。そう、140cm近くあるのに、頭身は4頭身程しかない。生物としてどんな進化したんだろう? これがドワーフってやつだろうか?

 しっかし、街中を見ると、人種の坩堝って言葉が良く似合う。確実に人間だって思われる人種が多いけど、それ以外の種族もよく見かける。さすがファンタジー。さすファン!!

 と、興奮してる場合じゃ無いな、情報を収集せねば!

 俺が再び、聞き耳を立てると、ドワーフのオッサンは「税金が~」とかって話から話題を変えた所だった。


「なあ、知ってるか?」

「あ? 何をだ?」

「ゴブリンライダーの話だよ」

「うん? 初めて聞いたな、街道にかい? 厄介だね、冒険者連中は何やってんだい」

「違う違う、街中で見たってぇ話さ」

「街中で!? おいおい、本当か? 見間違えじゃないのか?」

「本当さぁ、家の隣の野菜売りの奥さん居るだろ? あの人が見たらしい」

「あぁ、野菜もかみさんも熟しすぎの……」

「そうそう、あのもっふもふのな……って、本人に言うなよ?」

「分かってるわ、オレだって引っかかれたかぁねぇからな! で、何の話だっけ?」

「うん? ……あぁ、そうそう、ゴブリンライダーだよ、ゴブリンライダー」

「魔狼に乗ってるってぇ、アレだろ? 緑色の」

「いや、それが聞いた所じゃ、赤銅色で犬に跨がってたってぇ話でな」

「赤銅色なら、ゴブリンじゃあねぇだろう」

「だから変異種じゃねぇかって……」


 あ、あれ? もっふもふの奥さんに見られた、犬に跨がった赤銅色って……

 じっと手を見る。


 赤い……


 …………オレェ?!


 背中に冷や汗を流しまくりながら、跨がっているミカの首筋をペシペシと叩く。

 「あい、了解」とばかりに小さく鳴いたミカが、踵を返して教会に向かった。


 マズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイ!!


 今は都市伝説程度の噂話みたいたけど、これが本格的な討伐騒ぎにまでなったら、新生児な俺なんか確実に狩られる!


 まさかまさかのモンスター認定とは、お釈迦様でも気が付くめぇ。

 この世界にお釈迦様は居ないけどな!!


 こうなると、俺に取れる手段なんてそうはない。

 教会に引き籠るか、この街を出て行くか、それとも……


 とりあえずは、教会に戻って対策を練らねばならん!!


 ******


 教会に戻って真っ先に飛び付いてくるのがセアルティ。この仔、本当にミカが好きだな。

 それに続くのがウリとガブリとラファ。こっちは俺に飛び付いてくる。

 ソレをもふっていると、のし掛かって来るのがバラキ。コイツはいつも1テンポ遅れるのな。

 因みにイグディだけはアクビをしながら日向ぼっこ継続中。本当にマイペースなヤツだ。


 生後1ヶ月足らずだけど、コイツ等は俺の大切な家族だ。


 ゴブリンライダーの噂は、まだ広まっては居ない様だけど、現実として、俺が出歩く事で目撃情報は増えるだろう。

 だからと言って教会に引き籠ると言う選択肢はない。まだまだ自給自足で生きるには足りない物ばかりだからだ。


 仔犬達や俺が育ってくれば、ソレはますます顕著に成るだろう。何せ、今はおっぱいで済む食事事情が、固形物に成れば倍増間違いなしだからな。


 その為の家庭菜園ではあるが、それでも、足りなくなる可能性の方が高い。

 せめて、俺が最低限、逃げ延びられる力をつけるまでは、慎重に動かなければならないだろう。

 せっかく作った家族と居場所だ、失ってたまるか!!

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