決まっていた未来
謁見の間では宰相さんと、鎧着た近衛騎士が全員大理石の床に伏している。
壇上では、ロシアンブルー王が、余りに早い状況の移り変わりに着いて行けず、若干青褪めた表情のまま、大きくポカンと口を開けて固まっていた。
まぁ、それに関してはスーリヤも同じだがね。唖然とした顔で、周囲の床に伏した宰相さん及び近衛騎士達を眺めている。
セフィだけは胸を張ってドヤ顔で鼻をフンスと鳴らしていやがるが。いや、おまい騒動の原因作っただけだからな?
ともあれ、今ここに立って居るのは、俺とセフィとスーリヤとロシアンブルー王のみ。彼我の戦闘力差を考えれば最終的に見えた未来であろうが、そこはそれ、色々と飲み込み難い現状がチラホラとなぁ。こうなった経緯も含めて。
だから、俺は敢えてこう言おう。
「どうしてこうなった」
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魔力装甲のスリットから漏れ出る赤光が激しく明滅しながら循環する。俺は両腕に、【エクステンド】をソードモードで起動させると、近衛騎士達の間に飛び込んだ。オファニムに搭乗してのジェット推進に比べれば鈍足も良い所なんだが、それでも俺の動きにまともに対応できる騎士は一握りしか居なかった。いや、俺の速度に付いて来れるってだけでも凄いんだろうけどさ。ただ、反応できていようといまいと、その結果は同じ事だ。
【エクステンドソード】の刃の部分は凝縮された【プラーナ】がギュイイィィィン!! てな音を立てながら高速で循環している。
それをもって、騎士達の持つ槍を使い物にならない様に切り刻んだんでな。反応できなければ細切れに、ガードしてきたヤツのは微塵切り。受け流そうとしたヤツのは千切りに。
「キッ!! キエエエエエエェェェェェェ!!!!」
唐突な奇声に視線を向けると宰相さんが両手を胸元で天に掲げながらわなわなと震えていやがる。何だアレ?
ガキイイィィィン!!
俺の背後から一寸質の良い槍を叩き込んできたのは多分隊長格。
成程、他の一般近衛騎士とは格が違うやね。う~ん、近衛騎士って時点でエリートなんだから、一般近衛騎士って単語は可笑しいか。まぁ、良いか。
宰相さんの奇声はこの隙を作る為だったのか? ちらりと宰相さんの方を見る。いや、違うな、何かそんな表情。いや、クマの表情は分からんが、そんな雰囲気なんで。
そしてその槍も三枚おろしにしてみましたとも。てか、圧縮プラーナで作った刃が高速循環してるんだから、ソードってかチェーンソーな気もするが。良し、気にしない。
と言うか、これで全員の武器は使用不能にした訳だが……
武装解除は防具も含む、よなぁ。スーリヤには目の毒に成っちまうが。全員鎧下にしちゃるわ!!
「!! 全員! 跪いて頭を下げよ!!!!」
俺が一歩進み出た瞬間、間髪入れずにそう叫んだのは、さっきから奇声発してた宰相さんだった。同時に壇上から飛び出し、そのまま俺の前に五体投地。
ビダンッ!! てか、ズダンッ!! って感じの音がしたけど、痛く無いんか?
唐突な手のひら返しな命令に、近衛騎士の人達も困惑気味。
「早く! 早くせんか!! 頭を下げん者は、国家反逆と見做すぞ!!」
再度の宰相さんの言葉ってか絶叫に、近衛騎士達が慌てて五体投地。え? どんな状況!?
「ト、トール様におかれましては、こちらの不手際により大変不本意な状況と成りました事、お詫び申し上げまする!! どうか!! どうかご容赦を!!!!」
さっきから手のひらクルンクルン回っているんじゃが? あれだな、ビームな長刀とか持たせたら良さ気な感じだな。多分。




