予定は未定
いやぁ~、はっはっはっ。俺、難聴系主人公って訳じゃないんだが、思わず聞き返したくなったわ。
いやいや、一寸待ってくださいよぉ。
後ろ盾に“成れ”? “成ってくれる”んじゃなくて?
普通、力のある方が“成る”もんじゃねぇの? 後ろ盾って。
思わずスーリヤの方を見れば、彼女の方は『納得した! 非常に、ディ・モールト(非常に)納得した!!』とばかりの表情をしてやがる。
そう言や、彼女の方も『国王が会いたがってる』的な事しか知らされて無かったんだか。だとしても、何故、納得顔?
これはあれか? もしかしなくてもドラゴンをスレイヤーしたトールさんに用があるって方だったか?
「そなたが闘神の神子である事は聞いて居る!」
そっちかぁ~。そう言えば、別に闘神の神子だって名乗っても居なかったが、『いや、違うからね』程度にしか否定もしてなかったわ。
イネスさん『分かっております』的な納得の仕方してたから、他言とかしないよな? とは思ってだけど、流石に自国の国王様にまで秘密にはしてくれんかったか。いや、積極的に自慢してた可能性すらあるわ。
多分恐らく『広めないでね(ツッコミ待ち)』的納得だったんだろうな。
まぁ、それは兎も角。
「いや、俺は別に闘神の神子と言う訳では……」
『そーだよぉ。とーるはあたしのかみこだよぉ』
「「「!!」」」
俺以外の全員が息を呑む。てか、どっから出て来たセフィ。
『りゅーみゃくぅ?』
「なぜ疑問形」
『?』
うん。分かってないって事は分かった。それよりも、謁見の間に詰めていた近衛騎士の皆さんがこちらに槍を向ける。まぁ、呼び出したわけでもない者が、唐突に表れればそうなるよな。
「こ、これはどういうことだ!! 聖女殿!!」
「え!! その、ワタシにも何が何だか!!」
うん。分からんだろう。神出鬼没だとは思うわ。まぁ、コイツ神としてあがめられてる訳だし。
いや、本体の方はか。
スーリヤも困惑した目でこちらを見る。
「あー、説明して無かったな。コイツ、某国で崇拝されてる【龍樹】って神様の、分身の一つなんだわ」
「はぁ?」
奇妙な物を見る目で見られた。まぁ、いきなり神様の分身だって言っても、普通、信じられるってぇ物じゃないよな。特にセフィ緑髪の美幼女にしか見えんし。
「何を訳の分からない事を!! 近衛騎士!! 狼藉者であるぞ、切らんか!! 聖女殿!! この失態の責任は取って貰うからな!!」
切らんかて、幼女が出現しただけでさぁ。しかも得物は槍じゃん? 切るよりも突く方に特化してる気がするんじゃが? それよりも普通、捕えんかじゃないんか。てか、お願いして来てこれかよ。敵対行動してる訳じゃないんだから、ちったぁ話聞けよ。ピリピリしてるってのは理解できるんだが、一応、味方の筈なんじゃねぇの? 俺等。
怒鳴っている宰相さんとは裏腹に、国王さんは若干青ざめてキョロキョロしてる。って、毛並みが青いのは元からだったわ。
『わぁ、おおさわぎぃ~』
「いや、お前のせいだからな?」
宰相さんに命じられた近衛騎士達が、こちらに向かって槍を突き出す。よけるのは簡単だが、こっちにはセフィもスーリヤも居る。俺だけが無傷でも意味は無いし、向こうを傷つけるのも不味いだろう。
「なら!!」
俺は魔力装甲を展開し、身体能力向上をブースト、アドアップし、むしろ騎士達の中へと突っ込んで行く。こうして周囲から突き付けられて厄介なのは、“同時に一斉に”って事なだけだ。そこが厄介だと言うのなら、それを崩してやれば良い。
あえて突っ込んで行く事で槍のタイミングをずらし、端から捌いて行く。当然だがセフィとスーリヤに突き付けられてるヤツを優先で、だ。
一気にすべての槍を捌き切った俺に、近衛騎士達の驚愕の視線が刺さる。
いや、この程度で驚かれてもな。それじゃ、こっから反撃、やっちゃうよ?




