敵を知り……
『それに何時からおまいら生き物に成った』と言う無粋な言葉は流石に飲み込んだわ。
確か、エントロピーを増大させずに減少させ続けるのが生物の定義だったか? 実際には拡散しながらも減少させてるらしいが、そういう意味では、聖武器は生物ではないんだがね。基本、拡散してる一方の筈なんで。
ただ最近は、意志があるって事が“生きてる”って言う事だ的な考え方も、特に『無機物だけど心があるねんて』ってぇ展開の物語なんかでは多いから、シンギュラリティってるっポイ聖武器達はそっち方面から見れば、生物だとか言えるのかもしれんやね。
俺からすれば、意思の疎通が出来るってぇ事の方が重要度高いから、生物かどうかは、あんまり気にしてないんだが。
人間だって元素の塊ですしおすし。それよりも話の通じない人間の方がもっと厄介……
って、これ全部前世の世界の話だったな。こっちでも同様かどうかは良く分からん。何せ【魔法】なんて謎エネルギーがある訳だし、俺だって【プラーナ】なんて謎エネルギー使ってる訳だし。
もっとも、前世の世界には【魔力】は無かったけど、【プラーナ】とか【オド】とかは有ると言われてたりはしたけんどもさ。
最も、『科学的じゃない』とかってオカルト扱いだった訳だけど。暗黒物質だったり暗黒エネルギーだったりも仮定でしか無い筈だったのに、どこで“科学”と“オカルト”を分けてたんだろうね?
プラーナだって暗黒エネルギーの中の一種かも知れないのになぁ。
って、前世の世界に思いを馳せててもしょうがなかったわ。
「そう言えば、オーサキ伯。このまま鎖国に成った場合に予想されるデメリットと言うか、魔族の企みとはいったいどのような物なのでしょう?」
「うん? って言っても、あくまで予想でしかないけどな」
実際、黒幕の思考は分からんからな。ただ、今まで起こしてる事からの予想はある程度できるってだけの話で。
「取り敢えず、前提として、魔族が何故、問題を起こすのか知ってるか?」
「魔族だからでしょう?」
そう俺の質問に応えたのはイネスさん。いや、魔族だからて……いや、魔族を絶対悪だとか思ってるんなら、そういう回答もあり得るのか。
そうなると、この世界の人間は『人が苦しむのを楽しむ為に、魔族が活動してる』とか考えてそうだよな。
「邪神に魂を捧げる為では?」
ああ、魔族が邪神から【加護】を貰ってるってのは知ってるんだったっけか。そう言えば、グラスと話してる時にも、魔族が魔人族へと、人間種へと戻ったのは、改教したからだとか言ってたっけか。
てか、二人共に魔族についての知識は、それ程多くは無い様だな。
そもそも、魔族と出会うってぇ事が稀なんだったわ。ちょくちょく会うんで忘れてた。忘れてた。何なら、家の領に、一柱、常駐してるし。この間もゴモリーに会ったばっかりだし。
成程、良く分かってないからこそのイメージな訳だな。




